星月夜1

□04.世界シリーズ
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白い壁に赤い屋根の小さな家。
出窓にはミニ薔薇の咲いた鉢が飾ってあり、銀古美の柵で囲まれた庭には小さな赤やピンクの花が咲いている。
玄関から部屋の出入り口の扉まで、煉瓦が敷いてあり、お洒落な扉は、ビスケット型になっていて、金古美のノブには薔薇の彫金がしてあった。
外からちらりと見える、薄紅色のカーテンの内側には、白いブラインドが垂れ下がっていた。
桜色の天蓋付きのベッドには、カーテンと同じ桜色のシーツが敷かれており、ハートの形をした枕の側には、焦げ茶色のテディ・ベアが座っている。
サイドテーブルにはすずらん型のランプがあって、楕円形の鏡の付いたドレッサーと、大きな書き物机があり、家具も全て薄紅色で統一されていた。

天蓋付きのベッドには、セミロングの黒髪をツーサイドアップに結わえ、柔らかそうなガーゼ生地の白いワンピースに身を包んだ少女が眠っていた。
雪花石膏のような青白い頬には、長い睫毛が影を落とし、パフスリーブになっている姫袖の先からちらりと覗く、細い指先も、やはり青白かった。
その時、パタリと扉が開き、栗色の髪をシニヨンにした少女が入ってきた。
「ただいま、お姉様」
眠っていた少女がゆっくりと目を開けた。
「おかえりなさい。千瑛ちゃん」
小さな鈴のような声が千瑛のココロを幸せで満たす。
双子の姉の千陽は、生まれつき病弱で寝たきりだ。
でも、千瑛にはいつも優しく微笑んでくれる。
世界でたった一人の千瑛の良き理解者であり、最愛の人だ。
「今日はねぇ、英語が難しかったのよ」
「それは災難だったわね。今日は気分が良いから、後で教えてあげるわ」
「やったー。ありがとう♡千陽姉様」
千陽は可愛い妹を見つめた。
いつも側に居てくれる千瑛は、千陽にとって、世界で一番大好きな人だ。
千陽の世界の全ては、この家だけだ。
きっと最初で最後の恋人も、愛おしい双子の妹だ。
生まれた瞬間から、運命で結ばれているのだと二人は思う。
二人は、この小さな世界で最高に幸せなのだ。
end,
2015.1.26.
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