本棚(びっぽ)
□キャラじゃない
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あーぁ、こんなんじゃ渡せないじゃん。
もう、こんなことならバロのもみんなとおんなじにしてこれば良かった。
基本的に女子らしいことはあまり得意じゃない。
裁縫は苦手だし、不器用で、得意な教科は体育。これじゃまるっきり男子だ。
だけど、両親が共働きで自分で料理をしなければならない機会があった為、料理だけは人並み以上にできた。
だからいつもよりちょっとだけ気合いを入れた、バレンタイン。
友チョコはもちろん、仲のいい男子にも義理チョコを渡した。
本命チョコは..
みんなとは違う特別なチョコ。
上手く作れたし、不器用なりに可愛いラッピングもしてみた。
けど当のバロが女子に呼び出されて居ないから渡すに渡せない。
そりゃあバロはそれなりにモテるし、しょうがない。
だからといってわざわざ探しに行って、渡すようなキャラじゃないし、やはりこういうことに関しては消極的になってしまう。
バロと仲のいいサンドゥルに頼むという手もあるが、みんなに渡した物とラッピングが違うので何を言われるかわからない。
今更、みんなとおんなじにすれば良かったなんて後悔しても遅いけど、チョコが上手く作れただけに悔やまれる。
あー、なんかもう馬鹿馬鹿しくなってきた。
やめよ。
もう帰ろう。
柄じゃないことしようとするから上手くいかないのかな、なんて自嘲ぎみに笑う。
(うー。さむっ、)
外に出ると、唯一素肌が出ている顔を突き刺すような衝撃。
誰もいない家へ急ぐ。
「よ、名無しさん。」