本棚(びくす)

□片思いが終わる時
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「もう、卒業か…。」



学校の帰り道、ぽつりと呟いた名無しさん。
彼女がどういった心情でその言葉を言ったのか、僕にはわからない。


僕も彼女も3年生の最大の行事である修学能力試験を終えて、入学試験も同じ大学に合格していた。
浮ついた気分で2月を迎えた僕。

そのせいか、なかなか実感がなかったが今月末には卒業式だ。


「そうだね…。」

「進学か…、何か変わるのかな。」


沈みかけた太陽が彼女をよりいっそう美しく魅せる。

「テグンと別れるのがそんなに寂しい?」

にやにやしながらしゃべりかけた。
いつものように。でも、今日の名無しさんはいつもとどこか違っていた。

いつもだったら馬鹿にしないよ!なんて怒ってくるくせに。
俯いてだんまり。別にそんなに恥ずかしがることじゃないだろ。



僕はテグンがうらやましいよ。頭が良くて、運動もできて、ルックスも整ってる。
コミュニケーション能力はとてつもなく低いけど、それでもそこが魅力的なのかそれなりにモテる。

クールでかっこいいとか、ミステリアスな感じが素敵とか。


本当はテグンってすごく可愛いんだぞ!っていっても信じる人は少ないだろう。

テグンの友人は数少なく、そのなかでも仲がいい僕はテグンのことを親友だと思っている。


だからテグンの好きな人は聞いたことないけど、名無しさんの恋がうまくいけばいいって。

名無しさんを応援してきた。自分の気持ちに嘘をついて。


好きな人が、大切な人が幸せならそれでいい。



そうやって都合よく言い訳して逃げてた、傷つくのが怖くて。

名無しさんの相談役というポジションで満足していた。
名無しさんのそばにいられないよりマシだって。





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