あの日からずっと

□幼少期1
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彼女は、リンの親友だった



そして、オビトのことが好きだった






アカデミーの頃から、それなりに話す仲だった
彼女は賢く、話してて楽しかった覚えがある

あと、いつもリンといた記憶がある


俺がミナト班に配属されると、リンと一緒になって尚更話すようになった。
多分彼女は、オビトと話すのが目的だったのだと思うけど


そんな、彼女から
俺は親友と好きな人を奪ってしまった、ころしてしまった





毎日、毎日
彼女の居ない時間帯を狙い墓へ来て、なにする訳もなく時間を過ごす
彼女の気配を感じるとそそくさと帰り、俺は逃げ続けていた

友だちの少ない俺にとって大切な存在であると感じるからこそ、どうすればいいのか分からなかった


しなければ、言わなければならないことはずっと胸に残っているのに




オビト、そして
リンがしんでから一か月は経った日のこと





その日は、毎日の繰り返しで油断をしていたんだと思う

足音に気付いて振り向いた時には彼女がいた

直ぐ目を逸らし、腰を上げて歩き始める


今、今だろ、言えるだろ俺

この距離で、彼女は俺が居ることを確認してここまで来たのだから彼女だって俺の言葉を待っているだろうに、ああ怖い


言え、ない






「ねえ」


彼女の横を通り過ぎた時呼ばれた
足を止めてしまった





「なんか、ないの?」


怒っているのか、悲しんでいるのか、少なくとも良い雰囲気ではない声色で彼女は話す


「カカシ」


僅かに俺の口が開くが、口布をしていちゃ分からないくらい小さいものだった


「オビトとリンがいなくなっちゃってさ、それにお父さんもお母さんも戦争で」


知ってる

「言えないんだよ・・・しんだ、って」


俺も、未だ口に出すことが出来ない

「そうなのに、うまく言えなくてさ。まだ受け止めきれてないんだなあって思う」


俺も、一生背負っていくだろう




「わたし、ひとりになっちゃった」


俺が、そうさせた


「なんて、思わせないでよ」


どういうことだろうと、思考が少し止まった



「ねえ、カカシだってひとりじゃないんだよ?」




・・・ああ、泣いてしまう


「ひとりぼっち同士、一緒に居なきゃ本当にひとりになっちゃうからさ・・・ねえカカシ、お願いだから」

彼女も泣いているようだった


「一緒に居ようよ」




よく分からない感情が湧いてきて身体が震えた


緊張も解れたらしい


「・・・ごめ、んッ」


ずっと胸に残っていた言葉を吐けば、背中に衝撃がきた


「ひッ、く・・・!ばかっ」

「ごめん、ごめん・・・!」


きっと彼女は、俺に謝らせたい訳じゃない
でも、俺の謝罪を止めないでくれるのはとても気が楽だった。この謝罪は自己満足だから


「うう、ッく、うええっん、!」

「ごめ、!う、うっごめんッ・・・!」


彼女は俺の背中で泣き、俺も年相応に泣いた






俺たちは、一緒に居るしかなかった

互いに慰め合わないと、今すぐにでも死にたくて死にたくて、どうしようもなかったのだ




彼女の方から来てくれて、俺は本当に助かった




「あり、がとう・・・っ」

「ん・・・?」



「名無しさん」






名前を呼んでしまえば、関わりを持つような気がして、大切なものを再確認してしまいそうで・・・それをまた亡くす覚悟なんて、まだなかったから



「カカシ」



ああ、でも名前を呼ばれるというのは・・・なんて心地良いんだろう。

そんな風に思ったのは、名無しさんが求めるように呼んでくれたからだと気づくのは、もっと先になってからだった


 

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