幸村生誕小説

□忘れないで
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3月5日俺の誕生日兼俺たちの卒業式だ。幸い俺達レギュラーは皆 高校受験をしないで高等部に上がるだけだが赤也は違う。学年が違うから赤也だけはもう1年中学に居なきゃいけない






「さて赤也はどこかな」



先ほど無事に卒業式を終えて会場を後にした俺は目的の人を探す。一応2年生は全員参加なので式には来ているはずだ。




式の最中に赤也を見ると此方を睨んでいるようにも思えた。
睨んでいる、には語弊が有るかもしれないが痛いほどの視線を浴びていたのは確かだ




歩き馴れた道…授業が終わった後に部室に行くための道を歩く。赤也のことだ。きっと部室の隅で身を縮めて密かに泣いているに違いない




というかレギュラーの皆は式が終わって友達や先生との交流を終えた後に部室に集まることになっている。早めに行ってあげないとブン太や仁王にからかわれるな と思い足を速める




部室の電気スイッチを入れ部屋を見渡す。やっぱり部室の隅にいる




「赤也」



「ぶちょー…」



「部長は赤也、君だろ」



「幸村さんはいつまでも部長っす」



「困った部長だな」



グスグスと鼻を啜る声とともに弱気な声が聞こえる



「寂しいの?」



「あんたは寂しくないんですか」



「まあ寂しいと言ったら寂しいけど」




「1年も離れるんっすよ。んなの耐えられないっす」



「永遠の別れじゃないよ」



いつからだろう。赤也が俺たちの前で笑わなくなってきたのは



今まで仁王達に寂しいか?などとからかわれていた時はそんな素振りを見せなかったがやはり寂しいのだろう





「赤也」



「…なんすか」



「これあげる」



「…なんの花…」



「あ、やっぱり分からないか。それね。シランの花。他の事は自分で調べてね」




花を1輪、家から持ってきた。自分の誕生日に花をあげるのは新鮮だな




「精市。もう来てたのか」



「ちょっとね。蓮二も速かったね」



「必要最低限の付き合いしかしてこなかったからな」



「流石」



「ところで丸井が探してたぞ」



「あー本当?ちょっと行ってくるよ」



ドアに手を掛けた時



「赤也。その花は恋人から貰ったのか?」







シラン(互いを忘れない。変わらぬ愛)



「愛されてるな」


「…(真っ赤)」



たまにはこんな誕生日もいいかな

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