テニプリ夢小説
□告白【白石】
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ガラッ
背後で聞こえた音にふと書く手を止める。
『なんや凛、まだ帰っとらんかったんか』
その声に胸が少し高鳴ったのはきっと私のこの気持ちのせいだろう。
だがそれを表に出すことは絶対にしなかった。
『あ、白石くん。ちょっとベンキョーしよ思うて…いつの間にかこんな暗なってたんやな』
胸の高鳴りを誤魔化すようにそう言って笑う。
『いつの間にかって…』
呆れ顔で白石は答える。
『白石くんこそどうしたん?』
『いや、ちょい忘れ物してもうてなぁ』
かばんにノートをしまいながら白石はそう言った。
『そっか、ご苦労様やね笑』
『ホンマやわ、無駄な時間使ってしもうたわ…まあ凛がおったんはラッキーやけど』
最後の言葉はしかし凛には届くことなく白石の独り言で終わった。
『ふふ、じゃあその無駄にした分早よ帰らなね、ほなまたな』
無駄という言葉は、先ほど白石が入ってきた時に胸を高鳴らせていた凛の心に少なからずダメージを与えたがそれを誤魔化すように笑ってそう答える。
そして凛は解きかけの問題に目を戻す。
そろそろ暗くなってきたし帰らなければならないのはわかっていたがキリがいいところまで終えてしまいたかった。
『ふぅ』
キリもついたところで帰ろうと思い立ち上がる。
『わっ!白石くん帰ったんやなかったの?!』
そこには先ほど帰ったとばかり思い込んでいた白石の姿があった。
『アホかいな、こないな時間に1人残してかえるわけないやろ』
そう言われ少し驚く。
『え、私大丈夫やで?暗いのとか別に怖くないし。』
『はぁ、そうゆう問題ちゃうて』
心配してくれるのは素直に嬉しかったがどういう問題なのかは全くわからなかった。
『まあええわ、取り敢えず送ってく。自分家この近くやろ?』
そう言われ申し訳無さの後ろに少しの喜びを感じる。
『うん。でもホント大丈夫やで?』
『ええから早よ支度しぃ、待っとるから』
そう言う白石の顔が少し朱く見えるのはきっと夕日のせいだろう。
そんなことをぼんやりと考えながらさっさと荷物をしまう。
『ほな、いこか』
そう言って教室を出ようとする白石を慌てて追いかけた。
『なんやすまんな、無駄なことさせてしもうて…』
送ってもらえることは嬉しかったが、あれだけ無駄が嫌いな白石を待たせてしまい、申し訳無さでそう謝る。
『…無駄やないで?凛と一緒に居れるんや』
凛の様子を伺うように白石はちらりとこちらを見やる。
だが凛は白石の言っていることが理解できず口籠る。
『んー、やっぱ直球で行かな伝わらんか…』
呆れたようにそう言う白石は野球の話でもしているのだろうか…そんなことを考えていると
『…せやからな…俺は凛が好きやから一緒に居れるだけでええって言うとるんや』
顔を朱くし、そう言う白石の言葉を頭の中で反芻し、ようやく意味を理解する。
『……!あ、あの…//』
焦って言葉がうまく出ない。
ずっと片思いだとおもっていた好きな人が自分を好きだと言ってきたのだ、焦らないでいられるわけがなかった。
『す、すまん、驚いたよな!まあ返事とかは急かすつもりないで安心しぃ…ほな帰ろかっ』
そう言って歩き出す白石のシャツを咄嗟につかむ。
『…あ、その…私も、白石くんのこと…好き、…だから』
『…!!!ホンマか⁈ エクスタシーや!!おおきにな』
そう言って笑う白石を見て胸がまたひとつ高鳴る。
『…夢とかやないよね?ホンマよね?私白石くんと…』
そう言いつつ手で頬をつねってみる。
と、白石はその手を掴むと静かに凛の唇に自分のそれを押し当てる。
『これで、信じられるか?』
吐息が感じられるほどちかくでそう囁かれ顔が熱くなる。
耳まで真っ赤になっていることが自分でもわかり思わず恥ずかしくなり凛は俯く。
『…ほなー…帰ろか』
そう言われ、どちらからともなく手を繋ぎ歩きだす。
凛がチラリと白石を覗き込むとぷいっとそっぽを向いてしまった。
しかしミルクティー色の髪の下から覗く耳は真っ赤だった。