BOOK1
□3.主人公
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ルハンに引っ張られたまま大道具が置かれている倉庫のようなところに連れてこられた。
人が全然いなくて、大道具の影になるところに入った後、やっとルハンが立ち止まった。
当然私も立ち止まる。
ルハンが振り返り、向かい合った状態。
掴まれていた腕がやっと解放された。
近い。まさかこんな近くで生ルハンを見れるとは…。
さっきも近かったが、2人っきりとだとわけが違いすぎる。
ルハンの整った顔に緊張する。
暫くじっと何も言わず黙ったままで私を見られて、手にじとっと汗が滲む。
さっきみたいに睨んでいるわけではなく、むっとした顔をして私を見ていた。
だが、怒ってるような感じには見えなくて口をグッと固く閉じていた。
この不思議な空気が変わる兆しが見えないのに耐えられなくなった私は、
「ごめんなさい」
とルハンに頭を下げた。
ルハンが何に怒っていたかはわからないが私に怒っていることは確かだ。
まず、何故怒られているのかわからないという謝罪をした後、本題を話してもらって謝るのが筋だろう。
深く下げていた頭を上げた。
上げると唇を噛んで苦渋を味わったような顔したルハン。
初めて見るルハンの表情にびっくりしたが、それで怯むもんかと口を開こうとした。