短編

□大丈夫だから
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第四次忍界大戦が終わってしばらく経ってからだった




その症状が出始めたのは…






夢を見るのが怖くなって
、寝つけない日々が続いた




酒や煙草に頼ってみたがどうにも安らかな眠りにつくことができない




夢を見ることが怖くなって




夢を見ない手段を探した




病院には行きたくなかった


人に迷惑をかけたくないからだ




違法な薬屋で販売している睡眠薬にも手を出した




その薬が体に害があるとわかっていたから極力頼ることはしなかった




限界が来た時だけ使っていた





















目覚まし時計の音が鳴り響きゆっくりとシカマルは目を開けた




(今日も寝つけなかった…)



重たい体を起こし目覚ましを止めた





寝付けば夢を見る




それは戦争中の夢だったり…暁でのあの一件だったり






ご飯を食べてから家を出る




最近は書類整備に没頭していたシカマルだが、ここ最近はあまりの顔色の悪さに休暇を強制的にもらった





どこを行くわけでもなく、ただ歩いていた



「休暇をもらったはいいが…なにもすることがねー」



立ち止まり空を見上げた



「なら、俺の家くるか?」



ひとりごとだったはずのその言葉に返事が返ってくるとは思っても見なかった



(一番会いたくなかった人に会っちまった…)



シカマルはそう思った




「それにしても随分と痩せたな。お前…」



街を歩きながらゲンマはシカマルに聞いた


「そんなことないっすよ」


シカマルはゲンマからの質問をサラりと流した



「お前の特等席に連れて行ってくよ?」




「いいっすけど…なんでっすか?」



「それは付くまで秘密だ」



ニカッと笑ったゲンマの笑顔はどこかまぶしく思えた

















「ここに来るのは久しぶりだな…」


2人ならんで腰を下ろした
沈黙を破ったのはゲンマだった


「ペインの木の葉崩しの時に一回壊れちまってますしね」





「立て直されたのか、よかったな」




「そうっすね」



シカマルの特等席がある場所に来るのは久しぶりだった


木の葉の里に任務で来る度、ここの場所に来ていた



「今回はいつまで休暇だ?」



「今日を含め…あと4日です」



「なるほど…奇遇だな。俺もだ」



そこまで聞いてシカマルは後ろに倒れるように寝っ転がった




「空…見るのは久しぶりかもしれない」


シカマルがボソッと吐いた



「それに最近はまともに眠れてもいなさそうだな…顔色悪いし隈がすげー」



その言葉を聞いたシカマルは驚いた


久しぶりに会ったというのになぜわかってしまったのか…


「図星…という顔をしているぞ?」




「やっぱりあんたにはかなわねーな」



「俺だけじゃない!みんな気が付いてる…サクラたちもとても心配していた」




「…」




「何があったのか、話すだけでも楽になれるんじゃねーか?」



「話すって何をっすか?」



「やはりお前頭のキレ悪くなったな」



「余計なお世話っす」

















暫くの沈黙が続いた後口を開いたのはシカマルだった



「夢を見るようになった」



「どんな夢だ?」



「いろんな夢だ」


シカマルは頭の後ろに回していた腕をほどき、目を隠すように置いた




「アスマが暁に殺される夢だったり、親父が死ぬ時の夢だったり、俺の手の中で消えていった命だったり…」




「そうか…」




「その中で俺は何とも思わないんす。ただ頭の中でずっと分析してるだけ、目の前で命が消えるのにそれをどうとも思ってないんす、アスマも親父もそこでは次々とその死体を捨ててくんすよね…深い深い谷底へ…真っ赤な血の底へ」







「あの戦争でたくさんのものを失ったのは誰だって一緒ってことはわかってます。でも俺はその死を受け入れるどころか、その死をひたすら分析してただ結果として処理しちまう…それが耐えられないんすよ。そしてそれをシュミレーションしちまんす」






ゲンマはひたすらシカマルがしゃべり終わるまで待った



「その夢を見るようになってからはなかなか寝付くことができなくなって…いや眠ることが怖くて。この思考をなんとかしたくて仕事に没頭しようと仕事も増やしました。でも疲れ切ったって寝付くこともできねーしこの思考も休まることがなかったんです。煙草や酒も頼ったけど駄目で」


そこまで言うとシカマルはポケットから小瓶を取り出した



「そしてこれに頼ったんすよね」


シカマルは苦笑いした


「この薬はなんだ?」




「違法薬物の睡眠薬です…依存性高いしほかにもリスクがあるがこれにたよんねーともう眠れなくて」


シカマルは自嘲気味に笑った




「他に方法はなかったのか?病院に行くとか」



「病院に行ったらばれるじゃないですか?それだけは嫌だったんす…ただでさえみんな忙しいのに」



「なるほど…それでこのありさまか」



「情けねーですよね」



「シカマル」



ゲンマが不意に名前を呼んだのでシカマルはなん?とゆっくりと体を起こした


するとゲンマはシカマルが握っていた小瓶をするりと奪い取った



「これは没収!俺が預かってやろう」



悪戯気にゲンマが笑った


「それから…」


そうゲンマが言うと小瓶を取り上げあれ浮遊していたシカマルの手を握り引き寄せた


体制を崩したシカマルがゲンマに近づく



「おわっ!」


最終的に抱きつくような形になった



「感じるか?」


シカマルの顔がゲンマの胸にぶつかる



「…」




「お前は少し頑張りすぎなんだ。たまには人に頼ることも大切だ。」


ゲンマはそっとシカマルの背中に腕を回した


そして赤子をあやすようにトントンと背中を叩いた







「かっこわりーじゃねーすか」




「たまにはかっこ悪くたっていいだよ」




「っ…そんな…めん…ど」




「シカマル…我慢するな」




「うっ…」



シカマルは歯を食いしばり声を押し殺して泣いた









声が聞こえなくなっと思いゲンマがシカマルと呼んだが、返事がなかった




その代り規則正しい寝息が聞こえた




「寝ちまったか…」



そのまま自分の膝が枕になるように横に寝かせた



目が少し晴れている


涙の伝った後を指でなぞった




「お疲れ様…大丈夫だから今はゆっくりと眠りやがれ」




そしてゲンマは一人で空を見上げた




「今日もお前の大好きな雲はゆっくりと動いてるぜ」









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どうしても書きたかった弱ってるネタです!

ホントはアスマとかシカクさんにしたかったのですが、2人とも死んでるじゃん=ゲンマになりました!


まだテマリさんには挑めそうにないです笑


ご観覧ありがとうございました!

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