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□ファイト2
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・・・
あれから、何分か、何十分か、または何時間か(流石に何時間はないと思う)、うちはドンさんと戦ってた。
いや、特訓してもらった、と言うべきかな。うちはもう息も乱れてて、肩で息してる。
そんでもって、もう銃を持つ手が震えてて…ロクに動けやしない。
もう、限界。だけど、それでもドンさんから目を、離せない…
どうしてか、離しちゃ、いけないって、本能的って言うんかな…が告げてるから。
せやから、今はドンさんとずっと目を合わせて、動かずにいる。
ドンさんも、動かない。
どうしてやろ…今なら、うちをボコッとできるチャンスやのに…

「はぁー…はぁー……」
「………」

何も言わずに、ドンさんはうちを見てる。手に持った剣はそのまま。

「ふむ…フレア。てめぇ、強くなれねぇと、そう言ったな?」
「へ?確かに言ったよ。それに、理由も言ったやろ?」
「お前は強くなれる。伸び代があるからな」
「え?なんで⁉︎」
「誰だって努力すりゃそうなる。確かに報われない努力はあるにはあるが…それは何かが原因でそうなってるだけだ」
「…確かに、元の世界の生活環境は良くはなかった。今の方がずっといい。でも、元の世界のせいかな、うちは努力する事が大嫌い。したくないし、したとして、絶対追いつけないじゃん」
「それはてめぇでてめぇの限界を勝手に決めてるからだ」
「……そこまで、いうなら。ほんの少しだけ、ガンバってみるよ」
「なら、俺はお前を鍛えてやる。お前は自分が思ってるよりずっと強いやつだ。目を見ればわかるからな。よし、今日はここまでだ。明日また来い」
「…ありがとうございました」

伸び代…うちにもあるんや。まぁ、誰でも才能や素質があるものにはあるもの、か。ドンさん程の人がなんで直接うちを鍛えたがるのかわからんけど、まぁ…少しだけ。ほんの少しだけなら。

ガンバってみようと、思う。

しんどい事なのに、不思議と嫌だと思わなかった。だから、もしかしたら。そう、微かな期待を持った。

”もしかしたら、強くなれるんじゃないか”

っていう、期待を。
ドンさんが先に帰って行く。その背中を見て思う。ドンさんが背負うソレは、きっとうちよりもずっとずっと重いモノやって。ドンさんの事、なんにも知らんのに、そう思えて仕方あらへん。

ピク…


この、感じは––––

「今の、うちはお前らなんかに…やられたりしーひんわ!」

うちは、そんなアニメや漫画の主人公とかキャラ達みたいに気配察知なんて事、できひん。せやから、直感で奴らの位置を掴んで、銃で撃つ。

バン!

何故か、こん時はいつものパァンっていう軽い音じゃなかった。だけど、ドサッていう音が聞こえたから仕留めたんやと思う。良かった。倒せて。

ここに居る人達が傷付くのは、嫌やから。傷付くのは、うちだけでええ。だってうちはイタイのも痛いのも慣れてるやから。確かに痛い思いとかイタイ思いとかをしやんと生きる事だってできなくはないで?
でも。
そんでもな、イタイ思いや痛い思いは絶対に1度は感じて、体験しとくもんや。せやないと…きっと弱くなる。まぁ、身体の傷や怪我は痛いだけで済むから、まだ皆には負われても大丈夫やけど。だけど、精神の方の怪我や傷は、身体の傷や怪我よりもずっとイタイ。
だから、絶対に負ってほしくない。もう皆は少なからず負ってるから。新たに増やさんでええ。
っと、そろそろ戻ろう。考え事はいつでも出来る。
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