地球の言語じゃ表せない

□9/不憫なあなたを見守る
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〜お姫様抱っこやらなんやらのくだりを偶然見てた後輩、黒田side〜

例の荒北さんの彼女さんが去ったあと。その場に残された三年の先輩たちと真波は真剣な顔でなにやら話始めた。

「荒北さんがかわいいなんて…チカにはやっぱり眼科紹介した方がいいよね…」

「ていうかチカには靖友がどんな風に見えてるんだ?純粋に気になる」

「いや、それよりつっこむべきところがあるだろう?なんだあのデートプランは…イワシとクラゲに何か恨みがあるとしか思えんな…」

「お前らボロクソ言うネェ…?」

「荒北は愛されているのだな。良かった」

「アリガトネェ、福ちゃん」

「荒北さんよりオレの方が何倍もかわいいのに!」

「良かったな荒北。チカさんの目にはお前が天使に見えてるらしい。まぁオレの方が美形だがな!」

「チカ、現実を見たらガッカリするだろうな…靖友よりオレの方が顔いいし」

「お前らオレに恨みでもあるワケェ?いくらなんでも泣くヨォ?」

全くだ。人間顔じゃないんだ。三年の主に新開さんと東堂さん、それに真波はよく荒北さんをブスとかいっていじめてるけどオレはその、あらっ、荒北さんのこと、かっこいい……と、思うし、かっ、かわいいっていうのも…なんとなく分かる。

なんてことを考えているとどことなくションボリと肩を落とした荒北さんがこちらにきた。

「お、お疲れさまです」

偶然とはいえ盗み聞きしてしまった罪悪感で少しどもってしまった。そんなオレに荒北さんは落ち込んだ顔で聞いてきた。

「黒田は…そのォ、オレのこと…どう思う?」

勇気がなくてオレの顔と言えなかったらしい。かわいいな。

「かっこいいと思います」

日頃の人より努力してる荒北さんが脳にちらついて、思わず頬を緩めながら正直に答えると荒北さんは目に見えてさらに落ち込んでしまう。

「……顔がいいお前に言われてもイヤミにしか聞こえねェ…」

クソッ!!!!ブスになりたい!!!悔しくて落ち込んでる可哀想な荒北さんから目を逸らす。その時、後ろからタックルを食らった。

「ごふっ」

「何してるのー?ユキちゃん」

案の定力加減も考えず抱き付いてきたのはハコガクチャリ部史上最強の天然で自称洗濯のプロである葦木場。

葦木場は荒北さんに気が付くとぱぁあ、と顔を笑わせる。

「ユキちゃん荒北さんと仲良しだねー、良かった」

最初は仲悪かったもんね、とニコニコ笑う奴は空気を読むということを知らない。さすが。

そんな葦木場に荒北さんはオレにした質問と同じものを投げ掛ける。

「ナァ葦木場ァ…お前はオレのことどう思うゥ?」

やはり落ち込んだ顔で背の高い葦木場を見上げながら言うと、荒北さんは溜め息を吐く。

まぁ葦木場も顔が整ってる方だしな…なんとなく分かってしまって目を伏せた。

荒北さんが悲しむぐらいだったらオレもブスに生まれたかったクソ。

すると葦木場はふわふわと独特の笑顔でぽんぽん、と荒北さんの頭を撫でた。

「オレ、荒北さんの努力家なところすごい尊敬してるんですよ。すごくかっこいいから」

そしてやはり天然ならではの裏表のない笑顔。

荒北さんはそんな葦木場を見て落ち込んでいた顔を少しだけ綻ばせた。

「…ン。そっかァ…アンガトネェ」

そうして荒北さんは三年の先輩たちのところへ戻っていく。そして迷わず新開さんと東堂さん、それから 真波の順に関節技をキメていって。

つーか葦木場テメェ荒北さんのさらさらな髪触りやがったな…オレだってまだ触ったことないのに…!

でもまぁ今回は許してやろう。

荒北さんがオレの好きな、元気な顔に戻ったしな。

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