図書館戦争

□1、図書館は資料収集の自由を有する。―2
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本が狩られる時代。


国家機関メディア良化委員会の執り行う「検閲」対抗すべく

図書館は、本を守る軍隊――図書隊を有している。


織衣は、ハイポートを終えて、手塚と一緒に行動していると、偶然に堂上と会う。


「堂上教官、こんにちは」


「堂上二正、こんにちは」


「ん。伊江村と…手塚光一士だよな?

お前らの教官から、今年の新隊員で2人が全過程において、トップ争いをしてるって、聞いてるぞ。

期待してる。頑張れよ」


「はい!」


堂上の褒め言葉に織衣と手塚は返事をする。


「そういえば、伊江村。腕の調子はどうだ?」


「傷跡は塞いできたので、大丈夫だと思いますよ」


「そうか。でも、念のために次の実地訓練では、前回と同様に事務処理を手伝ってもらう。いいな?」


「分かりました」


織衣の言葉に、満足そうに堂上が頷くと、通り去って行った。





「伊江村は、特殊部隊の事務処理をやっているのか?」


堂上の姿が見えなくなった頃、手塚が織衣に訊ねる。


織衣は、「ああ」と反応して説明する。


「普通の警護をやって、何かあった時に傷口が開いたら、大変だからな。

まあ、警護実習が出来なくても、私は大学校時代の経験値はあるから問題ない。

私も手塚も内定しているからな。いずれ手塚も信頼されて、手をつける事になると思う」


「伊江村…何か恨めしいのに、憎めないな」


「なんだそれ?」


「伊江村は俺達の同期だけど、堂上二正の同期生でもあるだろう?

理解し合っている部分があって恨めしいのに、その言葉は、ずるい」


拗ねている手塚を見て、織衣は珍しく吹き出して笑う。


「何だよ」


「手塚の態度が面白くてな。

私の言った言葉のどの辺がずるいのか分からんが、自身の武器だから仕方あるまい」


「武器?」


「自分でも自覚しているが、私は性格は器用な方ではないし、親しい奴以外とのコミュニケーションは苦手だ。

だからこそ、引き出せるテクニックらしいが…これで言いたい事は分かったか?」


「お前も苦労してんだな」


「…心配してくれてありがと」


それ以降、織衣と手塚はあまり喋らない。


でもそれは、気まずさからくる沈黙ではなかった。
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