るろうに剣心
□現華火 〜点火〜
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------ここは地獄。
悪人どもがひしめき合うこの場所には
どこまでも続く闇とおびただしい程の人骨が
死んだ者たちを囲い込んでいる
否、囲んでいた、というのが正確だろう
何故なら ここは 既に
我らが主 志々雄様が国盗りを終えた後だからだ
我々が地獄に降り立って間もなく 志々雄様は
閻魔大王から地獄を勝ち取られた。
ここは我らのものとなり、閻魔御殿と呼ばれていた御殿は新たなアジトとなった
そんなある日(地獄に時の流れは皆無であると言っても過言ではないが)
私は自身に与えられた執務室で頭を抱えていた
十本刀のうち死んだのは私と宇水のみ、すなわちここ地獄に置いて現世とは圧倒的に戦力不足といえる
今の現状を維持するためには新しい戦力を確保すべきと考えた我々は「新・十本刀」を作るべく、地獄の悪人どもを片っ端から調べ上げた。
最も 強さや冷静な判断力、色々な要点はあるが、志々雄様がお気に召すか、が重要なのだが。
「・・・やはり、なかなか難しいものがあるな」
地獄の亡者の名が記された帳簿を閉じ、凝り固まった眉間を軽く解す。
ここ最近、同じことの繰り返しで少し気が滅入っているようだ・・・
こんな時は美味い豆茶でも飲んで気分を和ませたいものだ・・・
「豆茶・・・か」
ふと昔のことが蘇る。
教えた通りに煎れても毎回違う豆茶を煎れる奇妙な女がいた。
苦界で自由を奪われた身にも関わらず、笑顔で
「方治さぁん、おフネ好きなのぉ?」
などと聞いてくる一人の新造が
彼女はそれから間もなくして無残に命を奪われ息絶えてしまったが今頃はこちらに来ているのだろうか
否、彼女のような者が地獄に落ちることなどあるまい。
きっと今頃極楽浄土で大好きな舟でも眺めて過ごしていることだろう。
だがもし---------
「いかんいかん、志々雄様のもとへ伺わねば」
柄にもないことを考えた自分を嘲笑し 私は自室を後にした
《火はつけられた》