たったひとつの

□弍
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秀元と会って少したったときに、雅の屋敷の隣にひとつの家族が引っ越してきた。
隣といっても、大きなお屋敷なので結構距離がある。

「こんにちは、先日隣に引っ越して来たものです。どうぞ宜しくお願い致します。」

「こちらこそ。どうぞ、宜しくお願い致します。」

引っ越して来た男の人の後ろには雅と変わらないくらいの女の子が立っていた。

「ほら、珱姫。挨拶をしなさい。」

珱姫と呼ばれた女の子は恥ずかしそうに挨拶をした。

「あらあら、可愛らしい。雅、あなたも挨拶しなさい。」

『雅です。珱姫ちゃんよろしくね!』

「はい!」

珱姫は少し人見知りであったが、雅の人懐っこさですぐに仲良くなった。

そして雅よりも少し年下だったために、姉様と呼ぶようになっていた。

「姉様!」

『どうしたの?』

慌てたように雅を呼んだので何かあったのかと思うと

「美味しい甘味をお父上が買ってきてくださったので一緒に食べましょう!」

『そんな慌てなくても甘味は逃げないよ』

そう言って珱姫と笑いあった。

次の日に珱姫と一緒に水羊羹を作っていた。

「姉様、あの鍋を型に流し込んだらいいのですね」

『そうよ、あっ!!珱!危ないっ!!!』

鍋に珱姫が当たってしまい、ひっくり返り珱姫に羊羮の生地がかかりそうになった。

どんっ!!!バシャッ!!!

「ね、姉様っ!!!!」

『っつ…大丈夫、大丈夫よ』

珱姫を庇って雅は腕に火傷を負ってしまった。

「姉様ぁ〜」

そう言って泣き始めてしまった。

『大丈夫よ、気にしないで、ね?』

雅は珱姫をなだめるが、ダメだった。
すると、珱姫が突然火傷の部分に手をかざしたら跡形もなく火傷が消えてしまった。

『え?な、治った…?痛く、ない??』

「姉様ぁ〜よかったです〜」


驚きを隠せない雅の隣では泣きじゃくる
なぜだと思いつつ珱姫を宥める
そしてこのことを誰にも知られてはならないと思った。

雅は珱姫にこの能力は私以外に言わないように約束をした。

だが、15歳の時に珱姫が父に治癒という能力がバレてしまい籠の中の鳥となってしまった。


(姉様…父上にこの能力が知られてしまいました…)

(そ、そうか…(珱姫のお父上は珱姫を外には出さないであろうなぁ…)ごめんなさいね…)
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