転生物語

□第9章
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その夜


才蔵に言われ半兵衛は夕餉の時に自分の体の事を話した。
秀吉と形部は薄々気づいていたらしいが、三成と左近はかなり驚いていた。
そして才蔵が半兵衛の病を治すというとすでに才蔵の能力を見ている左近は目を輝かせていた。


「半兵衛先に言っておくぞ」
半「なんだい?」
「…病を治すに至って俺が能力を使っている間は感じたことのない感覚に襲われ暴れるかもしれない。
それを防ぐために体を押さえることになるがいいか?」
半「ふふっそれでこの苦しみから解放されるなら構わないさ」
「そうか。
秀吉、半兵衛の体を押さえるのを頼んでもいいか?」
秀「もちろんだ」


才蔵が秀吉に頼むと、


三「私に何かできることはないか!?」
左「お、俺にもないッスか!?」


三成と左近も手伝いたいのか聞いてきた。
それに才蔵は目を見開いたがどこか優しげな眼を向けた。


「なら三成は秀吉とは反対側を押さえてもらおう。
左近は俺のいう事をやってくれ」
三「分かった!」
左「了解ッス!!」
「形部と六郎には部屋に誰も近づけないで欲しい」
大「あい分かった。我に任せ」
海「分かりました」
「半兵衛、お前は幸せ者だな」
半「…そうだね」


半兵衛も才蔵に言われ微笑んだ。









そして夜。


形部と六郎のお陰で半兵衛の部屋には誰も近づかなかった。
半兵衛の部屋には秀吉、三成、左近がいた。
才蔵は耳と尾をだし寝ている半兵衛を見ていた。


「半兵衛、前開けるぞ」


才蔵は半兵衛の着流しの前を開き胸元を肌蹴させた。
半兵衛はいつもしている仮面を取っていた。
仮面のない顔にはどこか不安があった。
才蔵はそれに気づき半兵衛の頭を優しく撫でた。


「不安か?」
半「…少しね。
でももう大丈夫、才蔵を信じてるからね」
「あぁ…俺は俺の事を信じてくれた半兵衛を助けたい。
そして俺の事を認めてくれた豊臣のために俺にできることは何でもしたい」


才蔵は目を瞑り深呼吸をすると両手を半兵衛の胸元の上に手をかざした。


「秀吉、三成。頼むぞ」
秀「あぁ」
三「分かった」
「左近、半兵衛の汗を拭いてやってくれ」
左「はい!!」


才蔵は3人の顔を見てまた深呼吸をして手に力を集中させた。


フォォオッ


才蔵の手が光出した。
すると、


半「っぁぁぁあ!!!」


半兵衛が感じたことのない感覚に声を上げた。
それと同時に半兵衛は暴れようとしたが秀吉と三成が抑えた。


「っ半兵衛…!」
半「ぅあっはぁぁあっ!!」
「大丈夫…大丈夫だ」


才蔵は汗をかきながら手に意識を集中させた。
すると、


コポコポッ


半兵衛の胸元からどす黒い球状の物が出てきた。
それにまだ見たことのない秀吉と三成は驚いていたが半兵衛が暴れようとするので力を緩めずにはいられなかった。


「苦しいよな、つらいよな。ごめんな半兵衛」
半「ぃやっ…やぁぁあっ」
「声を出せ。溜めこむと呼吸が苦しくなる」
半「ぁぁぁあっ」


半兵衛は汗と涙を流していた。
左近はそれを優しく布で拭いてやった。


「秀吉っ三成、左近…声をかけてやれ…
半兵衛を応援してやれ」


才蔵がそういうと秀吉は半兵衛の手を握った。


秀「半兵衛よ、頑張るのだ!」
三「半兵衛様!半兵衛様!!」
左「頑張ってください!半兵衛様!!」


才蔵はそんな3人を見て小さく笑うと一気に力を使った。


半「ひゃぁぁぁあっ!!まっさ…い、ぞ…ぉ!!」
「頑張れ半兵衛!お前にはまだやらなきゃいけないことがあるんだろ!!」


才蔵は大量の汗を流しながらどす黒い球状の物を全て取り出すように力を込めた。


半「んぁぁぁあっぃ、やぁぁあっ!!!」
「半兵衛!半兵衛!!」


そして、


ゴプッ


半「あぁぁぁぁぁぁあッ!!!!」
「ッ!!」


半兵衛が体を弓なりにしたと同時に全ての汚物がどす黒い球状の物となり出てきた。
それは元就の時とは比べ物にならない程大きなものだった。
才蔵はそれを手の上に乗せると、


キュィンッ


黒い結界で包みこんだ。
そのままそれを持ち襖を開け、


バッ


空に向かって思いっきり投げた。
そして、


グッ
ドンッ


才蔵が手を握ったことにより破壊された。



「っは、ぁ……これでもう大丈夫だ」


才蔵は息を整えながら半兵衛の傍に座った。
半兵衛は疲労と脱力感を感じながらも息を整えていた。
才蔵は半兵衛の頭を優しく撫でた。


「よく頑張ったな半兵衛」
半「さ……い、ぞ…」
「もう…苦しまなくていいんだ。
お前は秀吉の隣を歩いて一緒に夢を叶えられるんだ」


才蔵がそういうと半兵衛は涙を流した。


半「っあ…り、がと…さい…ぞ…っ」
「今はゆっくり休め。傍にいてやるから」


才蔵が安心させるように言うと半兵衛は安心したように眠りについた。


「秀吉…半兵衛はもう大丈夫だ」
秀「っ才蔵…礼を言う」
「言っただろ…俺は俺の事を認めてくれた豊臣のために力を使いたいって」


秀吉は安心したような表情を浮かべた。


三「才蔵…私からも礼を言わせてくれ」
「三成…」
三「感謝するっ…」


三成はどこか泣きそうな表情をしていた。


「俺が半兵衛の事を見てるからお前らはもう寝ろ」


才蔵がそういうと秀吉達3人と外にいた形部は自分たちの部屋に戻った。
半兵衛の部屋には才蔵と六郎がいた。


海「お疲れ様です才蔵」
「あぁ…」


六郎は才蔵の隣に座ると才蔵の頭を撫でた。
すると、


ドサッ


海「おや」
「っ悪い…力を使いすぎた…」


才蔵はそのまま六郎に寄りかかった。
そんな才蔵を見て六郎は微笑み才蔵の頭を撫でた。


海「構いません、もう休みなさい。
才蔵は休むことを知らないんですから」
「っわ…る……ぃ」


才蔵はそのまま六郎に寄りかかったまま眠ってしまった。
六郎は才蔵の寝やすいように膝の上に頭を乗せてやったのだった。






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