転生物語
□第4章
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才蔵が弁丸のもとに来てからかなりの月日がたった。
弁丸も元服し、真田源二郎幸村の名を貰い武田信玄の下で修行をし、上田城を任される身となった。
才蔵も幸村を守る真田十勇士の1人となり、実力は長である佐助と同等となるほど成長していた。
戦もなく、一時の平和が訪れていた。
そんなある日、才蔵が城の見回りをしていると、
?「―――ぞ――いぞう――さいぞぉぉお!!」
誰かが才蔵の事を探している声がした。
こんなに大きい声で呼ぶのは才蔵の知っている中で1人しかいなくて、
「お呼びですか幸村様」
守るべき主、真田幸村しかいなかった。
幸「才蔵!某頼みがあるのでござる!!」
「なんですか?」
幸村の表情はどこか輝いていた。
この表情に才蔵は見覚えがあった。
幸「今日の政務が終わったのでござる!!
故に…その…」
どこか言いづらそうな幸村に無表情ではあるが苦笑いをしてそうな才蔵は、膝をついたまま幸村の手を取った。
すると、
シュッ
誰もいない部屋に移動した。
そして、
フォォォオッ
小さい狐の姿に変わった。
幸村が政務を終えると才蔵に抱っこを求めるのも日常茶飯事となっている。
幸村は目を輝かせ、
ギュッ
才蔵を抱き締めた。
幸「才蔵はとても気持ちがいいでござる♪」
「(そんなにいいのか?)」
紫[幸村様ご満悦だね♪]
なんてしていると、
「(この気配は…)」
知っている気配がした。
そして、
スパァンッ
佐「だぁぁあんなぁぁあ?」
幸「さ、佐助…!?」
笑顔だが目が笑ってない佐助が襖を思いっきりあけた。
佐「俺様言ってるよねぇ?政務が終わったからって才蔵連れてくなってさぁ…?」
幸「し、しかし…」
幸村がじりじりと佐助との距離を開こうとするが佐助も笑顔のまま歩み寄る。
これも日常茶飯事である。
才蔵はため息をつき、
フォォォオッ
姿を人間に戻した。
まだ耳と尾は出たままだが。
「残念でしたね幸村様。長に見つかったので本日はここまでです」
幸「なっ!?なんと!!」
「申し訳ございません」
幸村はどこか悔しそうに佐助を睨んだ。
佐「旦那もそろそろ才蔵離れしないとだよ?」
幸「そ、それはできぬ!!」
佐「なんで!?」
幸「才蔵の毛並みは天下一品。それを易々と辞められる訳がないでこざる!!」
佐「あんたそれでも城を任されてる主か!!」
とこの2人が言い合いするのも日常茶飯事である。
紫[ふふっ平和だね♪]
「(これでいいのか?)」
紫姫は微笑ましげに笑っているが才蔵は呆れていた。
幸「佐助!団子を買ってくるでござる!!」
佐「なんでそうなるの!?」
幸「減給するぞ!!」
佐「権力行使反対!!」
「(大人げないぞ幸村様…)」
紫[幸村様の方が年下だけどね…]
と2人が言い合いしているのを見て才蔵は耳と尾を仕舞った。
「幸村様、私が団子買ってきます。
いつものところでよろしいですか?」
と、才蔵が言うと
幸「さ、才蔵が行くのでござるか!?」
佐「そ、そうだよ!!才蔵疲れてるでしょ!?」
「(なんでこんなに止められるんだ?)」
幸村と佐助の変貌に才蔵は首を傾げた。
「大丈夫ですよ。私そんなに疲れてないですし、長だって仕事終わったばかりで疲れてるでしょうし」
佐「さ、才蔵…」
佐助は嬉しさのあまり涙目だ。
佐「お、俺様…こんなに長思いな部下ができて嬉しいよ…」
「(確かに、十勇士の長の扱い酷いよな…)」
才蔵は内心佐助に同情していた。
「では行って参ります」
才蔵は一瞬でその場を後にしたのだった。
その場に残った佐助が幸村から八つ当たりを受けているのを才蔵は知らない。
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