小説本文

□緑の境界線
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 バルトロメオはベッドにナミを押し倒した。愛しい人の羞恥に火照る頬に嬉し涙を落とさないよう何とか堪えたかったが数滴落ちていってしまう。
 真正面から組み敷いてついに理性が崩れた。
 それでも躊躇いがちに唇を重ね何度も角度を変えて啄ばむ。やわい口中を自分の歯で傷つけないよう慎重に進みたかったが押さえ切れず性急に舌を絡めた。口づけながら小さな膝が擦り合わされているのを見逃さず無理矢理割り開き指を這わせる。
 触れる前から溢れていた雫が指を濡らす。
 白濁と蜜が混じり扇情的だった。

 「んっふっ」

 バルトロメオが指を突き入れて蠢かすと合わせて腰が跳ねる。ぐちゃぐちゃに感じて合間から零れた体液が敷布に落ちていく。
 もったいない。
 一滴も余さず啜りたい。
 その反面、繋がりたい欲求も痛いほど脹れ上がっている。

 「っナミ先輩すんませんもうっ…!」

 震える顎が引かれるとバルトロメオは分身を秘所にあてがい一息で沈ませた。

 「っんんっっっ!」

 限界まで屹立していたそれを受け入れたナミは最奥まで届いた衝撃に一瞬で達した。中で弾けた飛沫が内壁を打ち感じてびくびくと仰け反る。

 放ったばかりだというのに喘ぐナミを見ていると下肢に熱が戻ってくるのがわかる。

 伸ばされた手を取りバルトロメオが反射的に甲に口づけるとナミの表情がやわらかく綻んだ。幸せそうな笑顔はバルトロメオの心臓を鷲づかみ赤面させる。

 「っずりいです…」

 かわいくて止まらなくなる。掠れて呟いた声にナミは答える。

 「今さら気がついたの?」

 ずるいくらい艶やかな笑顔を間近で見せつけられバルトロメオはぽかんと見惚れた。
 完全に硬度を取り戻した楔はその存在を充分に主張する。圧迫感に震えるナミの手を握り指を絡ませると落ち着かせていると見せかけて実は拘束している事実に痺れが走る。

 「ナミ先輩っ」

 律動が開始されると卑猥な音が響き渡る。

 「ナミ先輩っ息吐いて…楽にして…」
 「無理っできないっ気持ちいいの止まんないっ」
 
 連続で達しているナミに持っていかれないようバルトロメオは下肢に力を入れて抜き差しする。何度も最奥まで穿ち根元まで挿入する心地よさ。動きを止めて分身全部で締めつけを感じながら唇を重ねる。時折、秘所の浅い所を擦りながら律動させ一息で貫くと苦しいほど締めつけられる。

 「あああっ!」
 「ナミ先輩っかわいい…ですっ」

 蕩けた唇に額に望まれるまま唇を落とす。手を引き寄せて華奢な甲の筋に添いながら指に舌を絡めた。細くて綺麗な指。いつも見惚れていた。口に含むとどこか甘く感じてしゃぶりつくのが止められない。きゅうと締めつけられ感じているのが伝わり新たな体液が結合部分から溢れてくる。
 
 恍惚と指を貪るバルトロメオを見ているとナミは可笑しくなる気がした。
 普段どうとも思わない場所が途端に疼きだす。そこから生まれる疼きが全身に回って身動きが取れなくなる。手の平に厚い唇が吸いついてくるとぞくりと熱が灯る。

 自分の動きに細かく反応し蕩けていく様子を見せつけられ欲望が忠実に姿を現していく。
 バルトロメオは繋がったままナミを横向きに寝かせ片足を持ち上げて肩にかけるともう片方に跨る。

 「あっ」

 楔の角度が変わり膣内が激しくうねる。敏感な部分に先端が擦れやすく収まり、まだ動いていないうちから絶え間なく収縮して締めつけてくる。

 「何も考えなくていいですからっ好きなだけ感じてっ達してっ」
 「バルトロメオっんっ!」

 バルトロメオは担いでいた膝を折り曲げて下ろすとそのまま膝を押さえてゆっくりと腰を動かした。だがすぐに激しく突き上げるものに変わる。ナミが喘ぐしかできなくなる所を狙い極上の快感を分かち合う。

 「あんっあっんっ…ああっんっ!」
 「っく」

 うねる内壁が楔を包み奥へ奥へと導く。根元まで収まった結合部分がはっきりと見えその卑猥さに体温が上がる。いまだに夢を見ているような酩酊感にバルトロメオは我を忘れそうになり、これ以上ないほど怒張している分身が興奮に脈打ちナミを追い込む。

 「んっっっ」

 腰を動かし徐々に抽挿を早める。
 肌と体液がぶつかり密着度が高まる。新たな体勢はナミの知らなかった快感を引き出し湧き上がる愉悦に翻弄され、バルトロメオも沸騰しきった本能に従う。

 大事な人の喜ぶ姿。
 同じほど返される欲。
 我を忘れる気持ちに涙が零れる。

 「だっめ…もうっ!」
 「俺もっ!」

 バルトロメオは小刻みに腰を打ちつけ絶頂に震えるナミの中に昂ぶりを放った。気を失ったナミから分身を引き抜いたバルトロメオは激しい倦怠感に襲われながらも無意識にナミを抱き寄せて眠りに落ちた。

 良い匂いがする。
 ぼんやりとした覚醒の元、バルトロメオは鼻をひくつかせてそこに顔を埋めた。鼻腔に広がるのは好きな匂いだ、おまけにやわらかい。腕からふわふわとした弾力が伝わってきて相好が崩れる。

 「バルトロメオ君…ちょっと苦しい…」
 「うっわっすんません!」

 飛び起きながら後ずさるという器用な動きでナミから離れたバルトロメオはベッドから落ちかけていた布団を力なく横たわっている裸身に頭から被せた。
 背中に嫌な汗を感じる。
 バルトロメオは慌てた。
 側に行きたい気持ちと逃げ出したい気持ちがぶつかり合う。落ち着きなく右往左往するバルトロメオと対照的にナミは緩慢に布団から顔を出した。

 「元気ね…」

 倦怠感から言葉が続かず吐息が漏れた。艶っぽいが疲れが透けている。バルトロメオはおずおずと近寄ると頬に張りついている蜜柑色の髪を耳にかけた。

 「すんません好き勝手やって…」
 「謝ってばっかり」
 「すんません。でもナミ先輩を好きなのは本当で…オラなんかがおこがましいんですけど嘘つけなくて…」

 気がつけばバルトロメオは正座をしていた。

 「だから、その、何が言いてえかっていうと…」

 ごくりと唾を飲む。

 「これからも好きでいさせて下せえ!ナミ先輩の邪魔はしません、支えさせて下せえ!」

 ナミの双眸が苦笑して伏せられた。

 「変な告白」

 すぐに透明な雫が、目端から落ちた。

 「でもすごく聞きたかった」

 力の入らない手が伸ばされバルトロメオはその手を取るとしっかりと唇に押し当てた。
 安心しきったナミは再び目を閉じる。
 バルトロメオはかなり迷いながら決心すると布団に潜り込んでナミに寄り添った。

 眠ってしまったら全てが夢だったという落ちが待っていそうで怖かったが、ナミの寝顔がかわいらしすぎて寝込みを襲わないように昂ぶりを抑えるのにバルトロメオは一晩中費やした。


  終
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