小説本文

□どちらのもの
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 ローの腿の上に跨ったナミは貪るように唇を重ねた。触れる肉の感触、絡まる舌の熱さ、荒い呼吸。全てに焦らされ、感情が爆ぜそうになる瞬間を見計らって口腔に深く侵入され弄ばれる。

 背筋を走る甘い痺れにナミの理性が揺らぐ。
ちかちか瞬く視界の真ん中には愉快そうに、でもひどく興味深そうにナミを凝視するローがいる。

 「目、閉じないんだな」
 「…トラ男君が見たいから。そっちこそ閉じないじゃない」
 「発情したナミ屋を観察したいからな」
 「変態…」

 わかっているなら早く頂戴。
 ナミは言いかけて飲み込んだ。ローの手が腰に添えられゆっくりとなでられると不満がしぼみ、じれったい刺激に自然と腰が動くのを止められなかった。
 いつもであればこの時点でローが我慢しているわけがない。ナミを押し倒して衣服を剥がす時を惜しんでその体を求めているのに、今日に限ってうっすら笑って静観している。

 「どうしたんだナミ屋?辛そうだな」

 ナミの眉根がきつく寄せられる。
 ローはナミの答えを知っているのにあえて言葉を重ねる。腰をなでつつもう片方の手はオレンジ色の髪を梳くい、あらわになった耳朶を噛む。

 「いつもより感じやすいな…ここも、もう尖っている」

 髪先を弄んでいた指がナミの胸の先端を服越しに擦っている。そこは布越しでもわかる程つんっと主張している。
 腰を這っていた手がスカートの中に伸ばされた。あたたかい蜜が下着を濡らして刺激を待っている。ローの人差し指は下着の上からそこをなぞると敏感な芽を探りだしてぐっともみこんだ。

 甘く、だが泣きそうに切ない声が漏れた。

 「ローっそれっやだっ…」
 「これでも好いんだろ?」

 嘲笑するような言葉を無視してナミはローの首に縋りつく。

 「欲しいの…ちゃんとローが欲しいのっ」
 「っ…この淫乱猫め」
 「変態よりましよ…」

 語尾はソファと一緒に沈んだ。
 ローは屹立した分身を取り出すとナミの蜜口に押し当てずぷりっと貫く。甲高い嬌声が響いた。ぐちゅりと音を立てながら進む熱の塊に応ずるようにナミの体が何度も跳ね、待ち望んだ快感に瞳から涙が落ちる。
 ローはナミをうつ伏せにして四つん這いにさせると、その細い肢体を抱きながら律動を開始した。腹の奥にまで響く突き刺さるような圧迫感に堪えかねてナミはソファの縁に顔を埋めて必死で意識を繋ぎとめる。

 「あっあっんぅっ!」
 「っナミ屋…力を抜け」
 「や、だっ…無理っ」
 「そんなに俺が欲しかったのか?」

 馬鹿と言われるつもりで聞いたローだったがナミは素直に頷いた。硬直したローに気がつかないナミは突っ伏したまま呟く。

 「…好きじゃなきゃあんたの所に来ないわよ」

 人肌が恋しくて、情交の疼きに震えながら足を向けていたのは目の前の男の元だった。失言だったとナミは悔やんだが、ローは全く気がつかなかった。

 外道と呼ばれる海賊の中でぷつりとなにかの糸が切れた。

 ナミが欲しくて欲しくて堪らない。
 感情が溢れるのはいつだって己の方で、気まぐれにやってくるナミを繋ぎとめるのに必死だった。体だけの関係と割り切るにはもう遅かった。
 発情していなくてもいいから、己の所に来いと言いかけて口を噤む。そう簡単に手に入るような女ではないと知っているから、ローは言葉を控えて本能の赴くままに行為に没頭した。

 


   終

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