小説本文

□いつかの為に
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 いつか来るかもしれないその時の為に。
 無様な醜態を晒さない為にバルトロメオは今日も考える。

 泥棒猫ナミ。海賊王ルフィ大先輩の率いる麦わら一味の航海士。
 東海のアジトに貼った手配書はいくら眺めても見飽きる事がなく、むしろ時が立つほど憧憬が募る。世界政府の膝元を荒らしまわった伝説の数々。それをこの懐の深さを感じさせる笑顔の男がやってのけた。一味もどのような活躍をしたのだろうか、想像するだけで天にも舞い上がりそうになる。

 バルトロメオはナミの手配書を見上げてぽうっと頬を染めた。
 手配書というよりもポートレートのようだ。挑戦的な眼差しに艶っぽい首筋。一枚の写真から醸し出される色香はお尋ね者という気配を感じさせず、堂々とこちらを見据えてくる。

 いつか会ってみたい。
 できれば一言で良いから挨拶をしたい。

 バルトロメオははたっと気がついた。こんな垢抜けた美しい人を前にきちんと挨拶ができるのか。どうやって名乗ればいいのか。片膝をついて礼をとるのか、はたまたその手を取って指先に口付けるなど一体どこの本の話だろうか。
 だが、そのシーンを想像してバルトロメオは床をのた打ち回る。
 絶対に失礼があってはならないのだから、今から部下を相手に練習しなくてはとようやく立ち上がって再びはっとした。手ぶらで行っては失礼だ。何か贈り物を用意しなくては。

 今一度、手配書を穴が開く勢いで見つめる。
 垢抜けていて洒落た服を着ている。宝飾品もシンプルで品が良い。こんな人に一体どんな物を贈れば喜んでくれるのか検討がつかない。いっそ樽いっぱいの金貨や黄金を詰めた方が楽だが無粋すぎる。どうしたものかとバルトロメオは床を転がった。
 もちろん樽いっぱいの金貨にナミは狂喜するだろうが、夢見心地であれこれ脳味噌を絞るバルトロメオにはまだわかるはずがなかった。

《終》

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