小説本文
□緑の境界線
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ベッドの上で腕を掴まれた瞬間、バルトロメオは目を大きく見開いてから固まり慌てて顔を逸らした。
全身の血が狂ったように脈動する。頭の中でぐるぐる回る疑問符と言葉、本能的に叫びそうになった声とどれもがちぐはぐに主張して混乱を深める。
目の前に媚薬を飲んで火照っているナミが居る。
とろりと染まった目元。
半端に開かれた唇は唾液で濡れて艶を増し木目細かい肌は熱を帯びて薄っすらと汗をかいている。
生唾を飲む眼福ものの姿だが、同時に見てはいけないと警鈴が痛いほど鳴り喚いている。
「ねえ…バルトロメオ君…しよう?」
甘い声が耳朶に響く。
当たり前の男なら即座に頂きますと答えただろう。しかしバルトロメオは他に類を見ない麦わら一味崇拝者だ。一味の誰もに憧れ敬愛している。無論、ナミも例外ではない。
出てこない声は当てにせずバルトロメオはとにかく頭を左右に振る。無論、両目は閉じたままだ。
バルトロメオの腕からナミの手が離れた。
「ここ、こんなになってるのに?」
「っ?!」
ナミのしなやかな指がバルトロメオの下肢、膨らんだズボンの上をやんわりと撫でていく。
目を瞑っていると余計に神経が過敏になり危うく声が漏れそうになるのを必死で堪える。
「私のこと嫌い…?」
バルトロメオは高速で首を振る。
「じゃあなんで?」
言葉が出てこないので首を振るしか出来ない。
そんなバルトロメオに呆れたのか手が離れた。
名残惜しさよりもほっとした気持ちの方が強かったのだがそれはナミにも伝わったらしい。
「…もういい他の人の所へ行く」
「駄目です!」
文字通り飛び上がったバルトロメオは慌ててその手を掴んだ。目に飛び込んでくるのは泣きそうになっているナミだった。
理性と本能と罪悪感と、何一つ抗えないとバルトロメオは悟った。
「んっぁ…あっ」
バルトロメオの指が動くたび、抑えきれない嬌声が零れていく。お互い全裸になりナミを後ろから抱きすくめるようにしながら愛撫を施す。
「っナミ先輩…」
秘所に沈む指を内壁を擦りながら前後させると肢体があられもなく仰け反った。
溢れる蜜は指を濡らして敷布へと垂れていく。その一滴とて勿体なくバルトロメオは啜りたいのを堪えて蜜柑色の髪が波打つ頭部に唇を押しつける。
揺れるたびに良い匂いがする。
熱っぽくて興奮する。
指の抽挿に合わせて水音も響き渡る。
空いている手を恐る恐る胸へと伸ばす。下から掬い上げるとやわらかくて手の中でしっとりと形を変える。頭が蒸発しそうになる触り心地にバルトロメオはぼうっとした。
震える手で熟れた先端へと触れる。儚いようで固い蕾を撫でるとナミの腰が跳ねた。秘所が慄いて沈む指が断続的に締めつけられた。
「っナミ先輩…」
「う、んっ気持ちいいのっ」
甘い刺激に震える姿にバルトロメオの神経が焼き切れそうになる。
手の届かない高嶺の人。その人が求めてくれるのならば答えたい。もっと喜んで欲しい。この手で与えられるのならば何でも叶えてあげたい。
「バルトロメオ…」
切ないまでに色を滲ませた声に血が滾る。
バルトロメオの背が粟立ち、濡れる指を鍵爪状に曲げもっと慎重に中を抉っていく。蕩けた蜜を乱しながら少しでも長く触れたく、体中残らず熱を帯びさせたい。奉仕する喜びに震えるバルトロメオはついにそこを見つけた。指先が蠢くとナミの足先が敷布を握ろうと悶える。
「っっっそこ、だめっ」
「ナミ先輩かわいい…」
「っ馬鹿!」
膣がきゅうっと収縮した。
実際、バルトロメオはナミを心の底からかわいいと思っていた。憧れて遠くから見ていた時は恐れ多くてとても口には出せなかったが、こうして素直に喘いで縋ってくれる様子はいつもの距離を容易く縮めてくれる。
こうなるとバルトロメオは堰を切って囁かずにはいられない。蜜柑色の髪を掻き分けて耳を見つけ出すとやわく噛みつきながらうわ言のように繰り返す。
指に絡む蜜のぬめりが愛おしい。
もっと。
もっと。
もっと。
赤い綻びに惹かれてバルトロメオは胸の頂から秘所に隠れる芽へと矛先を変える。
「あんっ!や、ぁんんっ!」
乱れた声音は何よりのご褒美だった。
敏感な所を同時に刺激し何度も高みへと導く。びくびくと跳ねる体をゆっくりとベッドに寝かせると汗の滲む背中が目に入り白い肌の清楚さと淫猥さに息を飲む。蜜に濡れた腿に雄が猛る。夢中で唇を押しつけ、犬歯で肌を裂かないよう細心の注意を払いながらそっと肌を吸ってみた。じんわりと広がる赤い跡に胸がいっぱいになってしまう。怒られるかもしれないと思いながら花びらに似た跡をいくつも咲かせてしまう。
バルトロメオは無意識のうちに何度もかわいいと呟き、ナミが耳まで紅潮していると気がつかないまま臀部の付近まできて動きを止める。
そこを貪りたい。
でもうつ伏せのまま腰だけを上げてもらうのは、失礼ではないか。
真面目に思案したバルトロメオだったがすぐに手を打った。ナミに仰向けになってもらえばいいではないか。
簡単な事に気がつきいそいそとナミを抱えて体勢を変えた。軽い体を仰向けにさせると涙の滲む瞳と至近距離でかち合った。
心臓が爆発したかと思った。
綺麗で色っぽくすぎて切ない。
もらい泣きし始めたバルトロメオにナミは苦笑しその首に腕を回して引き寄せた。厚みのある唇に自身のそれを触れさせると涙が止まって硬直したのが面白くて何度も啄ばむ。丸く見開かれた目が落ちてくるんじゃないかと心配するほど愉快な顔をしているバルトロメオを煽りたくてナミは音を立てて口づけてみた。