小説本文

□ビターシロップ
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 ポーカーフェイスというよりも感情の起伏が恐ろしく薄いだけなのかもしれない。

 ホーキンスという海賊は笑ったり喜んだりと表に出さない。その代わり感情のままに荒ぶることもない。

 踏み入った関係になってからナミはホーキンスの僅かな動作から何を思っているのかわかるようになっていたので今さら不満に感じているわけではない。


 そうでなければ道端で占いをしている怪しげな男から「俺とお前は恋に落ちる運命のようだ」と真顔で宣言された日から今日までの波乱万丈な日々など語れない。


 だからこれはナミにとって好奇心を満たす為の遊びだ。


 ナミはホーキンスの髪を撫でた。汗で額に張りついた長い髪を耳にかけると無表情に見える目が顕わになる。


 対面座位で繋がり浅い抜き差しを繰り返すナミはようやく溜飲が下がる。

 涼しげなホーキンスに汗をかかせた。

 それが無性に嬉しい。

 喜びが下腹部を疼かせて内部を濡らす。一息で飲み込めない肉の塊を沈めさせたくてナミは腰をゆっくりと落とした。


 「あっん…」


 びくびくとしなる背をホーキンスはさりげなく支える。愛撫されたわけでもないのに手の平の熱に感じてナミは身を捩った。体の中に収めている楔も合わせて肥大する。


 「ホーキンス…出したい?」


 甘く扇情的な声音。

 ホーキンスは少し考えた。


 「・・・そうだな出したい」

 「まだだめよ」


 ナミは即座に言った。

 悩ましく呼吸を聞き果てるのを堪えているのはナミの方ではないかと考えながらホーキンスはその唇を塞ぐ。見開かれたキャラメル色の瞳を凝視しながら舌を侵入させると内壁がぎゅうと締まる。体をほんの少しずらしただけで嫌らしい粘着質な音が響く。


 「だめっまだっ」

 「意外だった。金にしか興味がないと思っていた」

 「酷いことを言うのね…あんたにもちゃんと興味があるのに」

 「そうだな」


 ナミは腰を浮かして快感を逃そうとしたがホーキンスがその腿を撫で顔色も変えずに芽を擦ると喉を反らして高い声で鳴いた。


 「やあっ」

 「俺もお前に興味がある」

 「んっ」


 腰を浮かせる所ではない。

 最奥までホーキンスを受け入れ内外から刺激されてナミは足掻く暇もなく達した。ひくつく秘所がどれだけ分身を搾り取ろうとしても硬度は保たれたままだ。


 ホーキンスはナミを支えて突き上げる。

 達して震える内壁は二人に均等な快感を与える。


 「ホーキンスっそれっだめっいっちゃう」

 「そうか」


 頷き、繋がったままナミを寝台に下ろすと細い膝を開いて抽挿を続ける。


 「っっっそういうことじゃないのにっ」


 ナミは真っ赤になって抗議したが体は素直に反応する。腰が打ちつけられるたびに理性が削られより深い快楽を得ようと合わせて動くようになった。


 ホーキンスは精を放ってからしばらく言葉を捜した。しかし珍しく二の句が告げず、首を傾げてナミの手を取った。シーツを握っていた指はまだ絶頂の余韻で痺れており絡ませて口づけると全身を震わせる。


 「満足したか?」


 無表情のままホーキンスは指を食む。


 「俺は満足していない。もっとナミを知りたい」


 ナミだけにしかわからない劣情を灯してホーキンスは問いかける。


 「お前は?」


 ナミはホーキンスの手を振り払った。長い髪を両手で引き無理矢理唇を奪ってそれに答えた。



   終

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