小説本文
□めしあがれごちそうさま
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ルフィはナミがどこに居てもすぐに見つける。
例えばそれがサニー号の中だけと限定したとしても、誰かがナミはどこだろうと見渡した時、ルフィは迷いなく最初の一歩を進んでいる。
測量室、風呂場、あるいはマストの見張り台に居ても必ず辿り着く。
もしかしたら食べ物の匂いに引かれてやってくるのかもしれないとナミは考える。
キッチンでお茶を出してもらったり女部屋でおやつを摘もうとする時、ルフィはひょっこりと顔を出す。俺にもくれよと言いながら一口目を齧り、二口目はナミの唇を舐めて大抵殴られる。
だってうまそうなんだもん、と悪びれる様子はない。
「食べたいんだからいいだろ」
底抜けに明るいこの笑顔にいったいどれだけの人が頭を抱えてきたのか。ルフィに関わったほぼ全員だとナミは結論を出した。
みかんの木の下でみかんごと食べられてまだ起き上がれない。
ルフィはナミの隣で食べていいと許されたみかんを、とうに食べ尽くして皮だけになったそれをまだ名残惜しそうに眺めている。
ナミはルフィの頬を引っ張った。
完全に八つ当たりだ。
どこに居てもルフィはナミを見つけ出し食べてしまう。
ナミもルフィに食べられたくて身を隠す。
自分からは言い出せず、恥ずかしいという理由だけなのだがその望みはいつも叶えられてしまう。何も考えていないくせに答えをしっかりと握って離さない勘の良さにあれこれ考えるのが馬鹿らしくなりナミはルフィに跨った。
「おいしそうね…私も食べていい?」
終