小説本文

□運命が巡って落ちた
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 ドンキホーテファミリーに誘拐されたナミはそれでも諦めていなかった。

 脱出できる機会を。

 仲間が助けに来てくれる希望を。

 億万長者の一家から大金を盗み取る事を。

 手枷で自由を奪われ鎖で引きずられる恥辱を堪えるくらいナミには朝飯まえだ。脅えた振りをしながら宮殿の構造に目を配り頭の中に地図を描いていく。

 ナミは周囲に悟られないように胸の中で笑った。

 最後に勝つのは自分達だ。

 そう思って疑わなかった。


 「麦わら一味の泥棒猫ナミを連れてきました」

眩いばかりに豪華な部屋には幹部達がずらりと並び、最も奥手、窓辺にそれは腰かけていた。

 明るい羽を身に纏った金髪の大きな男。逆光で顔が見えない。手の中で弄んでいた電電虫を放ると流線型のサングラスが微かに光を弾いた。


 ナミの心臓が軋んだ。

 汗が背を伝い熱が全身を巡る。

 熱さと寒さに同時に苛まれながらナミは後ずさる。枷の重みも忘れて逃げようとするので幹部達は獲物を捕らえようとしたがドフラミンゴが無言で制する。


 きらきらとした最上級の羽が腕の動きに合わせて揺れくせの強い幹部達を静める様にナミは呼吸を止めた。


 会ってはいけない。


 頭の中で警報が鳴り響き耳が痛む。逃げられるならとうにそうしている。できないからこうして立ち竦んでいるのだ。


 「お前が泥棒猫か」


 天井から声が降ってくるようだった。ドフラミンゴはその巨体からは信じられない優雅さで立ち上がりナミの前に膝を折って目を合わせる。

 幹部達は呆気にとられた。

 ドフラミンゴがそんな態度を取る姿を見たことがない。騒然とした空気を物ともせずにドフラミンゴはサングラスを額に上げその眼で歯を食いしばっているナミを凝視する。

 恐怖だろうか。それにしては昂ぶっている。

 憤慨だろうか。それではこの震えに説明がつかない。

 絶望だろうか。それが相応しい。

 絶望と歓喜に揺れ、激しい感情に揺さぶられてくしゃくしゃになった顔が美しい。

 運命という不確かな神の気まぐれをナミとドフラミンゴははっきりと感じた。一目見た時から自分の半身が現れたとわかってしまった。

 「会いたかった、そんな言葉が似合うか?」

 「私達にはいらない…似合いもしないわ」

 「じゃあこうするか」

 羽が床に落ちた。

 「ようこそ檻の中へ」

 独特の哄笑を響かせドフラミンゴはナミを抱えあげると真っ直ぐに寝室に向かった。


 舞い上がるのとは間逆の気分。高い所から金属の塊を手放すとそれが底なし沼にずぶずぶと沈んでいく。沈みたくないと思っていても体は重く沼は決して離さない。


 ドフラミンゴはナミを全身くまなく愛した。何度達しても飽きずに攻められ、意識を飛ばし、目覚めればまだ足りないと弄ばれる。そうやって今しか考えられないようにしているのかもしれない。実際、ナミの思考は秒を刻んでドフラミンゴに染められていく。

 体格差がありすぎてまだ挿入まで至っていないが、そのせいで甘ったるい前戯はいつまでも続き煮詰められた砂糖が絡むようにナミはぐずぐずに蕩けていく。


 「ねえ、嫌じゃないの?」

 ナミはドフラミンゴが唇を引き結んでいる時にあえて尋ねてみた。

 乳房の間にそそり立つ杭を挟み、男性器とは思えない立派過ぎるそれの先端に優しく口づける。やわらかいふくらみから零れそうだったが何とか両手で押さえて揉みこめば胸の中で剛直がびくりと脈打つ。

 「いれたいんでしょ?」

 上目遣いで舌を出す悪戯猫にドフラミンゴは口端を持ち上げる。

 「壊れたいのか?」

 「ドフィので壊れるならそれもいいわ」

 「強がるな…当てるだけで震えるくせに」

 楽しみでぞくぞくしているだけよ、とナミは強がって膨らんだ亀頭を口に含んだ。

 口腔をいっぱいにする塊に満足に舌が動かせないがそれでも懸命に吸いついて上下させると柑橘色の髪が大きな手によって撫でられる。

 愛でるための手に残忍さはない。

 どれだけ血で汚れてきたとしても今は清潔な石鹸の香りがする。風呂場でも散々愛撫されナミはとうに昂ぶっている。下腹部が疼いて仕方がない。早くドフラミンゴに愛されたい。でももっと奉仕したい。

 欲情してひた向きに奉仕するナミにドフラミンゴは喉を鳴らす。

 「ナミ出すぞ」

 欲望が注がれる。

 ナミは懸命に嚥下するが溢れる白濁は口から零れて顎までつたっていく。

 「普通は嫌がるもんなんだがな」

 ドフラミンゴは愉快そうにナミの顎を持ち上げた。自分の体液を拭い嫌らしく息を乱している口に指を押し込めるとナミは夢中で吸った。

 楔に奉仕している時よりも遥かに卑猥な音を立ててしゃぶりつく姿に逞しい下肢が再び熱を持ってくる。蕩けた様子に支配感が高まる。

 「うまくないだろ…何がそんなにいいんだ」

 「ドフィのだがらっんぅ…不味いけど欲しいの」

 「フッフッフッ!」

 「きゃっ」

 ナミは軽々と押し倒される。

 「お前は俺を煽るのが上手い」

 ナミが両足を擦りつけ切なそうにしていたのはお見通しだ。アダルトビデオのように遠慮なく足を開かせると濡れた秘所が物欲しげにひくついている。

 骨太な指が臍をなぞりつっと芽と入り口を這う。もっと強い刺激を望む体が物足りなさに悲鳴を上げる。

 「っあ、やだ、それっ」

 びくびくと仰け反って腰を浮かせるのでドフラミンゴは嬉しげに指を沈めた。下手な男のいちもつ程もある指は容易くナミを慰める。

 「お前は俺を煽るのが上手い。だが俺もお前を可愛がるのが上手い。そうだろう?」

 「うんっんっ気持ちいいっ」

 指が入り口をかき混ぜるととろりとした蜜が臀部と敷布までつたっていく。それは指が増えても変わらず、むしろナミの乱れ方が激しくなるのでドフラミンゴの笑みが深くなる。

 顔を真っ赤にして喘ぐしかできないでいるナミにドフラミンゴの脳髄が炙られる。

どんな時も余裕を失わない王が我を忘れそうになる。

 涙を零し続ける瞳がうっすらと開いた。

 「いれて…いいのよ」

 蕩けるような誘惑に飲まれる。

 指を抜き凶悪に怒張している分身を蜜がたゆう秘所にあてがい、息を吐く。限界寸前だった理性を引き戻し、ナミの両足を掴んでぴたりと膝を揃えさせると腿の間に分身を突き入れた。

 敏感な芽を剛直で直に擦られて豊かな肢体が声も出せずにしなる。

 素股で挿入にいたっていない体位だが泡立つ体液と先走りで腿の間はぐちゃぐちゃになりまるで繋がっている感覚になる。

 達し続けているナミにドフラミンゴの声は聞こえない。それでも度重なる情交で磨かれた本能が足に最後の力を与えて締め上げた。

 「っ」

 欲望が放たれた。

 その大きさに相応しい大量の精液が艶やかに色めく腹や胸を汚す。ドフラミンゴが痙攣する腿から分身を抜くとナミはそれにも反応して喘いだ。

 ナミは隣に横たわってきたドフラミンゴの頬をなぞる。

 「…不公平よ、いつも私ばっかり気持ちよくなってる」

 「指が三本入るようにならなきゃ無理だ」

 「もう平気よ」

 今日のナミはいやに強情でドフラミンゴは手を焼く。眉間に皺が寄っているのは不機嫌の証ではなく困っているからだ。普段の傲岸不遜な態度からは考えられない素の表情にナミはなぜか泣きたくなる。

 「私が怖がるからいけないんだわ」

 気だるい体を引きずってベッドから降りるとドフラミンゴが脱ぎ散らかした服の山をあさって細身のネクタイを探し出す。

 「見えなければいいのよ」

 そのネクタイで目隠しをする。手探りでドフラミンゴの体に触れ、跨ると暗闇の中で先端を襞にあてがう。

 「んっ」

 ずるりとすべって充血した芽に先端が擦れるとあまりの気持ちよさに腰が震えた。このまま自慰の如く耽ってしまいそうなので必死で体を反らせるのと同時にドフラミンゴの手が伸びた。

 「や、だめ!」

 「気持ちいいんだろ」

 不埒な指が逃げようとする芽を弾く。

 にやにやと笑っている顔が思い浮かぶが奥から溢れてくるものを止められない。

 「だめだってば…んんっあ、やあっ」

 「見えないってのはいいな」

 胸の蕾を摘まれナミは仰け反り、その拍子に入り口を擦っていた先端が内部に押し込まれる。

 「っいっ痛くないからっ」

 大分無理をしているのがわかるがそれでもなんとか収めようとする。ネクタイの下では涙目になっているだろうと思いながらドフラミンゴはナミの体を撫でた。

 肩や鎖骨、首、背中とその緩慢な動きに合わせて繋がりが深くなる。痛みに抗っている中でドフラミンゴの手の優しさがナミの救いだった。そして徐々にだが自分よりも荒い息使いが聞こえてきて頬が揺るむ。

 「ねえドフィもうちょっとだから我慢して」

 「っそれは俺が言う科白だろ」

 「私、諦めが悪いのが売りなの」

 「そういう話じゃ…」

 ナミは暗闇で手を伸ばした。

 「好きよ…私を溺れさせて。もっともっと他に何も考えられなくなるくらい」

 不意に一味を思い出して罪悪感で窓から身を投げ出す前にベッドに押さえつけ、舌を噛み切る前に唇で塞ぎ快楽で思考を塗りつぶして欲しい。

 ドフラミンゴはその手を取って口づけた。

 「骨の髄まで俺を叩き込んでやる」

 その言葉にナミの体から最後のこわばりが抜けた。ぴったりと体が密着し奥の奥まで内臓を圧迫する肉塊を受け入れるとどっと汗が吹き出た。そして張り詰めていたものがとけ涙が止まらない。

 何も見えない世界でナミは抱き締められた。

 身を起こしたドフラミンゴが動くたびに意識が遠くに飛びそうになるがその厚い背中に懸命に手を回してなんとか留まる。

 何も見えない沼の底に落ちたとしてもこの手を離す気にはなれなかった。



 終

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