小説本文

□グレーの午後
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 本気と遊びの境目がどこか試してみたくなる。

 ローは下からナミを見つめ皮肉そうに口角を歪める。

 昼が過ぎ気温が高い時間をゆっくりとすぎたせいで測量室もまとわりつく程度にはあたためられている。窓を開ければ風が吹き込んで読書や書き物、何をするにしてもずい分と気持ちよく出来るだろう。

 だがそんな煩わしい事をする気はローにはなかった。目の前の暇つぶしの方が遥かに楽しいからだ。

 刺青の刻まれた手が白い腿を撫でる。


 「っ」

 「口、離すなよ」


 厳しい言葉に見せかけて口調は愉悦でいっぱいだ。

 タンクトップの裾を噛み締めるナミが赤くなったまま小さく頷く姿に満足して手の動きが緩慢になると布に歯が立てられる。声を我慢したのだろう。タンクトップを口から離してしまえばこの遊びは終わりだ。

 ローは改めてナミを見上げる。

 いい女だった。気が強くて子供に優しい。豊かに波打つ柑橘色の髪も綺麗で胸は大きく腰はくびれて緩やかな曲線を描いている。タンクトップにショートパンツという気楽な格好でさえさまになる。

 そのタンクトップの裾を咥えさせ、腹から胸元までが顕わになっていた。レースの下着が陽光に眩しい。ビキニと違って隠すべき物を晒している方がぞくぞくする。

 好きにしてもいいと言いだしたのはナミの方からだった。その前に何か会話していたがローはもう覚えていない。長い船旅で娯楽に飢えていたのかもしれず、冗談の類でうっかり零してしまったのかもしれないがあえて問い質そうとは思わなかった。

 ローは海図を書いていたナミを椅子から引き剥がすと測量机に降ろしてタンクトップを捲った。抵抗をタンクトップを無理矢理口に押し込める事で封じ、ほっそりとした足の間に身を沈めて腿の内側に唇を落とす。


 「口を離すな。目も逸らすな」


 それは命令に近かった。

 やわらかく脆い肉に軽く噛みつくと反動でローの肩が蹴られた。構わずに繰り返し甘噛みしているうちに蹴りは治まり、手が机の縁を掴むようになっていた。不安定な体勢を支える為だったのかもしれないが、都合が良いと大きく足を開かせる。スカートであれば下着が見えただろうとローは残念に思いながら吸いついた。気の向くままに痕を残していけば白い肌に派手に花弁が散っていく。

 自分の言葉を思い出して上目遣いになるとナミは律義にローを見下ろしていた。双眸を潤ませ息を堪えている様子はそそるものがある。


 「こういうのが好きなのか」


 ローは愉快になって尋ねる。

 唇で赤い痕をなぞると吐息がむず痒いのか足が跳ねる。


 「無理矢理がいいとは意外だな」


 勝気で我侭、気まぐれな猫のようだと思っていた。何か言いたそうに睨みつけてくる眼差しの他はいたって従順だ。


 「まあ…そっちの方が俺とは相性が良さそうだ」


 ローは身を起こすとそのままナミを測量机に押し倒した。急な動きだったのにも関わらず咄嗟にインク壷や書きかけの海図を手で払う所がナミらしかったが、そのせいで受身が取れず背をしたたかに打ったらしい。くぐもった声で呻いている。約束を守りタンクトップの端を咥えたままの姿に背が疼く。布を引くと唾液で唇が濡れていた。


 「好きにしていいんだろ?」


 ローは自分の指をナミに咥えさせた。


 「あんたの本気見せてくれよ」


 遊びじゃないと信じたくて腿を撫でた。


 終

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