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□あなたの傍で
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「んで? そのまま2人っきりに
して来ちゃったの?」


書類を出しにジルの執務室へ行けば今は
サラディナちゃんと城内公務中の筈の
ジルが彼女の執務室では無く自分の机で
書類を書いていた。そこで事の顛末を
聞けばそんな話で。


「ええ、それの何か拙かったですか?」


シレッと書類から視線だけを上げて言う
ジル。その視線は至ってマジ。
それってさ…


「えー、ジルってユーリ推し?」


そう茶化す様に言ってみれば、意外だと
でも言うように片眉を上げるジル。

こりゃ茶化してる場合じゃ無さそうだ。


「そういう訳でもありませんがあの子を
こちら側に欲しいというのが本音ですね
…貴方もそうだと思ってましたが?」

「そりゃ、まぁね。あれだけ腕が立つん
だから、あの子がアランと2人で彼女を
護ってくれたら鬼に金棒だけどさ。」

「ええ、その通りです。その為にも一番
手早く…且つ、確実なのは恋仲になって
しまう事かと。」

「次期国王候補にも?」

「さぁ、それは彼女が決める事ですよ。
あの方はああ見えて私情に流される事
無く自分を犠牲にしても国の為に王を
選ばれるでしょうから。」

「…うわ、悪徳。つまりは何? 恋人と
国王という名の旦那とは別に考えるって
…そういう事?」

「貴族女性では珍しく無い事かと。」

「あのサラディナちゃんがそれを良し
とするとは思えないんだけど?」

「その時はユーリに覚悟を決めて貰う
だけですよ。」

「こわ…っ。――って事はユーリの正体
調べがついたんだ?」

「シドは優秀ですからね。」

「そのシドがこれだけ掛かった位に
重要で複雑な立場って事かー。」

「おや、察しがついてましたか。」

「んー、あくまで可能性としてだけどね
…あー…じゃあ身分的にもアランは完敗
かなぁ…あいつ良い奴なんだけど。」


思わず真面目に語ってしまった。
だって俺としてはやっぱり弟推しとして
おきたい訳で。でもジルはそんなんで
誤魔化すなんて許さない。
そーいう奴。


「貴方も捨てたもんじゃないですよ。
今からでもどうですか?」

「冗談。…ウィスタリアにはまだルイも
居るしね。あと、大公殿も。」

「そうですね。私的には貴方がたを含め
その方々でも全くかまいませんしね。」

「あーホント悪徳。全部お前の掌の上
じゃん。怖いなー教育係。」

「国の未来と1人の女性の確実な幸せを
導くのが仕事ですから。妥協なんて
何一つ出来ませんからね。」

「妥協無しでこの選択肢かー。」

「ええ。」

「即答?…ホント怖い。」

「今更でしょう? 私からすればシドも
使わずそこまでの予測を立てる貴方の
その頭脳こそが脅威ですよ。…是非
これからも王宮のブレイン(頭脳)で居て
下さいね。」

「………ああ、はいはい。」


そんな会話で落ちた沈黙。
やっぱ、ジルは怖い。
何処まで見透かしてるんだろうこの男。
伊達に国王の右腕なんて言われてる訳
じゃないのは知ってたけど。

サラディナちゃん…エライ奴に見初め
られちゃったもんだね。
これからプリンセスなんて肩の荷が重い
人生を歩むには最強のパートナーだけど
俺としてはちょっと心配。

君には何の翳りもなく笑っていて欲しい
から。ジルの遣り方はあまりに合理的
過ぎて、ちょっと陰で君が泣く事も
有りそうだ。

そう考えりゃ、言葉少なに君を想い、
君の為に動こうとするアランやルイより
言葉も巧みで、君の為に形振り構わず
行動出来るあの子が良いのかも…なんて
思っちゃうじゃないか。

俺としてはアランを推したいトコなんだ
けどな。


そんな俺らの思惑の外、
あの子らは今どうしているのやら。



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