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□この晴れやかなる日に
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【 この晴れやかなる日に 】


サラディナの考える事は一々面白ぇ。

俺が常識的な人間だなんて思った事は
一度も無いが、あいつのそれが常識的な
感覚だって言うのなら、世界は平和で
なんて愛の満ち溢れた世界なのだと
思わずにはいられない。

大の男の生まれた日をまるでこの世の幸
すべてに感謝するとでも言う様に祝う
もんだから…どうも小っ恥ずかしくて、
擽ったくてしょうがねぇ。

『ねぇ、シドは何か欲しい物は無いの?
でなきゃして欲しい事とかは?』

こないだ公務のついでで、お前の顔見に
城にふらっと立ち寄った俺を、すぐさま
物陰に引き寄せ、上目遣いで頬染めて
そんな事を訊きやがった。

お前に物陰でそんな顔されて俺がタダで
済ますと思ってんのかよ?


――済まさなかったけどな。

あいつの柔らかな唇を貪り、吸い、舐め
食い尽くしてやった。

それでもあいつは俺の腕ん中グッタリと
力も抜けてやがるクセに強気な目で…
だけど何処までも甘い視線で俺を見上げ
『もうっ!』なんて俺の胸を叩き。

『次会う時までに考えておいてね?』

なんて蕩けそうに甘い表情(カオ)して
笑いやがったんだ。
お前のその表情一つで俺がどんなだけ
満たされるかも知らずに。


――ああチクショウ。
こいつに骨の髄までズップリだ。

お前だけが俺を揺るがし、お前だけが
俺を満たす。満ち溢れるまで。
お前のその豊かな愛情が俺の胸を震わせ
溢れさせ、何処までも俺を溺れさす。

こんな女、他にゃ居ねぇだろ?


だからお前は何時までも俺の側で、
そんな風に頬染めて幸せそうに笑って
いりゃいい。

それが何よりも俺の望みで希望だ。
俺が幸せになる為の最少限の要因だ。

覚えてろ。

そんな事を思いつつ、あいつに見送られ
城を後にした俺が、その日一日頗る
機嫌が良かったのは言うまでもねぇ。




そんな俺の誕生日前日の昼下がり。
俺は手土産片手に城へと向かった。

俺のお姫さんのご機嫌伺いと、あいつに
言われた希望を手に。

さて、あいつはどんな表情しやがるかな

こんなサプライズでも仕掛ける様に
俺がワクワクするなんて、やっぱお前は
タダ者じゃねぇ。
そう口端でニヤケながら、俺はあいつの
私室へと向かった。




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