L!
□A carbonated drink
1ページ/1ページ
自動販売機の新発売の文字に惹かれて買った飲み物は、炭酸飲料だった。
「美味しいですか?」
「結構いけるよ。飲む?」
炭酸飲料を飲む私を不思議そうに眺めている海未ちゃんに、半分くらい飲んだジュースを差し出すと、あからさまに拒絶された。
無理です。要りません。結構です。って。飲んでしまった時の感覚を思い出したのか、口元を押さえながら。
「…苦手だからって、そこまで言わなくても良いじゃん」
飲み掛けを否定されたみたいで、なんとなく落ち込んで口を尖らせる。
「に、苦手ですが、地球上の飲料水が全て炭酸になってしまったら飲めなくもないと思います」
「何それ怖い」
海未ちゃん的には、多分克服したいけど、出来ないから強がってるって感じかな。
「じゃあほら、その時の為に特訓しなきゃ。微炭酸だから、案外いけるかもよ?」
なんて、冗談半分で言って差し出してみる。すると、海未ちゃんは一瞬たじろいでだけど、意を決したような顔をして、缶を受け取り、ぐいっとそれを呷ってみせた。
「☆※μ@%∞!?」
うん、ダメだったみたい。口を押さえて悶絶しちゃったよ。
「お〜い、海未ちゃん。大丈夫?」
「っ…っ!?」
飲み込むことも吐いてしまうことも出来なくてちょっと泣きそうな海未ちゃん。正直ちょっと…いや、かなり可愛いいかなって思うけど、可哀想だから助けてあげよう。
取り敢えず、凹みそうくらい握り締めている缶はひとまず回収。って、かなり変形してる!?まぁ、アルミ缶だからね。
で、こっちの方も。
「はむっ」
「っ!?」
行き先の無い炭酸飲料も、回収っと。
む。海未ちゃん、勢い余って口に含み過ぎてる。一口じゃ無理かな。そんなことを考えながら、海未ちゃんの口内の炭酸飲料をコクコクと飲み干していく。
回収し終わって離れると、海未ちゃんは真っ赤だった。
「なっ…な…ほ、穂乃果ぁ!?」
「美味しかったよ?」
どっちが、なんて野暮なことは言わない。
「あ、そうだ。この方法なら、海未ちゃんも炭酸飲めるんじゃない?」
我ながら、良い案だと思うんだけど。
「破廉恥ですっ」
やっぱり怒られた。
毎度の彼女の言葉に苦笑しながら、残りのジュースを一気に飲み干す。
今度試してみようかな、なんて密かに考えながら。
END