L!

□SENTIMENTAL StepS
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放課後。
歌詞を完成させる為、集中したかったので、私は一人で部室に籠っていた。

「ふぅ」

暫く唸って、一曲の歌詞が完成し、達成感からの溜め息が漏れる。今回は別れを彷彿とさせる切ない感じをイメージしてみたけれど、改めて読み返すと、感情移入のし過ぎだろうかと思えてきた。

あの二人とは今までずっと、一緒だったけれど。この先は、どうなのだろう。将来目指すものが違ったら、いつか離れ離れになって逢わなくなって、すれ違っても分からなくなってしまう時が、くるのだろうか。

それは、仕方のないことかもしれない。
でも、やっぱり、寂しい気もする。我が侭なのは分かってるけど。

「っ」

いけない。離れ離れになった時の事を想像したら、涙腺がっ。

「海〜未ちゃんっ、調子はどう?」

「差し入れに甘い飲み物持って来たよ〜…って、海未ちゃん!?」

タイミング悪く、ことりと穂乃果がやって来てしまった。頬を伝う涙に気が付いたことりは、驚いた表情を浮かべ、それで穂乃果にも気付かれてしまった。

「ど、どうしたの?海未ちゃん!?」

「あ、すみません。昨日も遅くまで歌詞を考えていたので、欠伸が…顔洗って来ますっ」

まさか、自分の歌詞に感情移入し過ぎた等と恥ずかしいことは言える筈もなく、私は逃げるように部室を後にした。

「…はぁ」

何を考えてるんです、私は。高校生活はまだ一年以上あるというのに。
泣いてる暇があるなら、この時を精一杯過ごさなければ。
顔を洗って、頬を軽く叩いて気合いを入れる。

「よしっ」

そして、努めて何事もないような顔をして、部室に戻ると。

「「海未ちゃ〜んっ」」

「!?」

何故か涙声の二人にタックルの如くの抱擁を受ける羽目に。

「穂乃果、ことり?」

不思議に思いながらも、二人の背中を擦る。と、開いたままのノートに目が止まる。…読まれてしまったらしい。

「…二人とも、目が赤いですよ?」

「だって、海未ちゃんが…」
「あんな歌詞書くから…」

あぁ、きっと二人とも。同じように感じてくれたのだと思ったら、自然に笑みが零れた。

「ちょっと海未ちゃんっ。何笑ってるの!?」

「いえ、すみません。何だか嬉しくて」

「嬉しい?」

「穂乃果もことりも、同じように想ってくれたのかと」

「そっか。海未ちゃんも…」

少しの間、沈黙が流れた。
「ん〜〜、よしっ今日は帰りに何処か寄って帰ろうっ」

唐突に、穂乃果がそう言って、急に駆け出して転びそうになって。慌てて手を掴んで支えると、後ろからことりが抱き付いて来た。

「そうだね。三人で、何か買いに行く?」

この会話の様子だと、私も既に行くことになっているようで、二人は期待の眼差しを此方に向けている。

「もう、仕方がないですね」

そう応えると、二人は嬉しそうなはしゃぎ声を上げた。
いつかは、二人はそれぞれの翼を持って、夢に向かって羽ばたいて行ってしまうだろう。
でも、今だけは。

繋いだ穂乃果の暖かい掌に、背中に感じることりの温もりに。

もう少しだけ、溺れることにした。
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