L!

□ぶる〜べりぃとれいん
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カチカチと、時計の針が止まることなく進んでいく。それを止めたところで、世界まで止まる筈もなく。

「うぅ〜〜、どうしよぅ」

鏡の前で悩みに悩んで、もうどれくらい時間が経ったか分からない。
目の前には青と緑のリボン。貴女みたいな青色か、いつもの私の緑色か。
服のボタンも開けたり閉めたり。胸元が見えた方がドキドキしてくれると思うんだけど、破廉恥ですって怒られるかな?それとも、顔を真っ赤にしながらも、似合ってるって言ってくれるかな?

早く起きたのに、なかなか決められなくて、もう遅刻しそうだよっ。

結局、悩みに悩んだ挙句、直感に頼って一つのリボンを握り締めて、ショルダーバッグも忘れないように引っ付かんでパタパタと家を出る。

ガタンゴトンと電車が揺れる。席は空いてたお陰で、リボンは座ってからゆっくり付けた。互いの家は近いから、本当は直ぐに逢えるのだけど。デートっぽく何処かで待ち合わせしてみたいと言ってみたらこれだ。少し情けなくなりつつも、どうにも気持ちが焦るから、落ち着けるように何か考える。
真っ先に思い浮かんだのは、大好きな人の顔。これから逢えるのに、仕草だとか笑顔だとか考えただけで顔がにやけるから困る。慌てて、口元を押さえながら、告白したあの日のことを思い出す。

『私なんかで良ければ、喜んで』

一世一代であろう告白に、彼女は照れ臭そうに笑いながらそう応えてくれた。なんか、なんてとんでもない。海未ちゃん程素敵な人って中々いないと思うよ。でも、そういう謙虚なとこも大好き。

妄想で胸がいっぱいになった頃、目的地に到着。
しまった、にやけてる場合じゃない。急がなきゃ。
電車を降りて、猛ダッシュ。約束の時間はとうに過ぎてしまってる。どうしよう、怒られるかな、呆れるかな。

息を切らせて辿り着いた先には。

「っ!?」

イケメンが居た。
カッターシャツにジーパン。そしてジャケットという組み合わせをさらりと着こなしている。え?海未ちゃん、だよね?髪後ろで縛ってるけど。

「大丈夫ですかっ、ことり?」

膝を付いて息をする私に、海未ちゃんは駆け寄って背中を擦ってくれる。
どうやら怒っても呆れてもないその様子に、安堵の溜め息が漏れた。
それにしても。

「海未ちゃん、その格好」

「あぁ、これは」
照れたように頬を掻く姿も様になっていて、感嘆の溜め息が漏れる。

「ことりの隣を歩くに相応しい格好を悩んでいたら、穂乃果とその、皆が」

「…あぁ」

海未ちゃん、顔に出やすいからなぁ。皆ノリノリで選んでくれたんだろうな。海未ちゃんは着せ替え甲斐があるもんね。いいなぁ、ことりもやりたい。
…ていうかそれってつまり、皆にバレちゃったの?今日のデート。

「申し訳ありません」

遅刻して怒られるかと思ってたのに、海未ちゃんの方がしょんぼりしちゃってる。まぁ、休日明けに質問責めに遭いそうだけど。格好いい海未ちゃんが見られたから、良しということにしよう。

「まぁ、私も遅刻しちゃったし、おあいこってことでいいよ」

言いながら、腕にぎゅっと抱き付くと、海未ちゃんは擽ったそうな顔をした。でも、密かに喜びも垣間見えるからこっちも幸せな気分になる。

「行きましょうか?」

「うんっ」

イケメン海未ちゃんにエスコートされて、今日のデート開始。怒られることもなく、素敵な海未ちゃんも見られてもう幸せいっぱいなのだけど。一つ気になることが。

「そういえば、海未ちゃんいつから待ってた?」

「え?…約束の時間の30分前から」

しれっと、何でもないように海未ちゃんは言った。
うわあぁぁ、ことりのばかばか。それって結局、凄く待たせちゃってるじゃない。

「海未ちゃん、ごめんなさい」

素直に謝ると、海未ちゃんはきょとんとした顔をして、ふっと笑って私の頭を撫でた。

「怒ってはいませんが、次からは気を付けて下さいね」

何処と無く、機嫌が良いように見える。

「何か、良いことあった?」

何で待ち惚けになってたのに怒ってないの?って、多分顔に出てたんだろう。海未ちゃんは観念したように、苦笑して見せた。

「待ってる間、考えてました。ことりはきっと、何を着るか悩んでいるのだろうなと、それが私の為だと考えたら嬉しくて。待ち時間も全く苦ではありませんでした」

驚いて目を見開いていると、止めの一言が来た。

「その服と青色のリボン、とても似合ってますよ」

それはもう、これ以上ないってくらいの笑顔で。
ことりはデート前だというのに、早くも幸せいっぱいで気絶しそうです☆
まぁ、有らん限りの精神力で何とか持ちこたえて、乗り切ったけれど。今日一日やりきれるかなぁと、不安と期待でいっぱいになった。
本日晴天、絶好のデート日和。



END

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