綺麗なものは好きですか?

□プロローグ
1ページ/1ページ

暗い空間から男と女の声がする。
どちらとも、まだ若い声だ。
10代後半から20代前半といったところだろうか。
純粋であろうと思えば、純粋でいられる。
変わろうと思えば変化できる。
自分の中に閉じ籠ろうと思えば、誰からも虐げられることも無く、安全でいられる。
そんな年頃。
しかしそれは、普通だから出来る話だ。
彼らは普通ではなかった。
超能力があるとか、怪力であるとか、天才であるとか、そういうことではない。
外見はいい。
女の方はまるで、西洋人形のように美しく、見るものを惹き付けて離さない魅力があった。
比較的小柄ではあるが、それがより一層、彼女を人形たらしめている。
男の方は、近づきやすい、身近にいやすい爽やかそうな青年だ。
もしもの話だが、性格が悪かったら見た目に騙されてついていく女性が後を絶たないことだろう。
しかし、彼らの本質の前には、外見など些細なことであった。
彼らはどうあっても普通ではなかった。
そんな男女が会話をしていた。

「あら、不思議ね」
「そうなんだよ。僕にもよくわからないんだけどね?」
「まあ、仕方のないことだわ。どう足掻いても理解できないことなのだから」
「それで、次はあの子達をターゲットにするつもりなのかな」
「嫌だわ、ターゲットなんて言い方しないで頂戴。彼女達はとても美しいのよ。貴方なんかには理解できないくらいね」
「不思議な言い方だね?まるで君には理解できているようだ」

女の顔が不快げに歪む。

「だから、貴方って嫌いよ」
「光栄だね、君に嫌われるなんて」
「・・・不愉快だわ」

男は晴れやかな笑顔で笑ってみせた。
一方、女は忌々しそうに眉を寄せる。
その一連の動作等すらも美しく魅せるのだから、何とも美人は得である。
しかし、どうにもこの2人の関係性が掴めない。
考えたところで無駄ではあるのだろうが。
ただただ、周りは暗い。
男女は会話を続ける。
そんな光景が広がっていた。
4月の上旬のことであった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ