綺麗なものは好きですか?

□1-2
1ページ/6ページ

4人がやって来たのは、天文学を主体として、宇宙空間を観察するサークルだ。
それなりに人気ではあるが、実際に入る人数は、比率的にはそれほど高いわけではなかった。
何故かというと、山の上まで重い機材を運んで登ったり、キャンプを年に何回も行ったり、部費が高くかかったりして大変という印象が説明時についてしまうからだ。
さらに一番の欠点が、毎日星が見えるところまで行き、同じ時間に同じ方角を見て、観察日記をつけなければならなかった。
これが中々続かず、説明を聞いても入った人達もそれならばと辞めていった人数が多くなり、このサークルには辞め癖のようなものがついてしまい、噂にも流れ、あまり良い印象を今まで与えられなかったのだ。
これではいえないと思ったらしい、今年度部長が大幅な改革をした。
しかも、専用のホームページを作り『入りたくて堪らなくなる、大学の倍率よりも高い倍率になる』等と銘打った。
それで今、有名になっている。

説明をしている場所は、新入生だけではなく、在学生も来ているため、部屋は結構混雑している。
肩と肩がぶつかっても何ら不思議ではない状態で、陽と成深は出会った。

「おっと…ごめん」
「あ、すいません…」

普通ならここで終わりだろう。
しかし、陽の類い稀なる才能と呼んで良いべきコミュニケーション能力は、こんなところで終わるものではなかった。
相手が可愛い女性だったら、なおさらだ。

「それにしても、人多いね…大丈夫?」
「大丈夫です、ありがとうございます」

陽は成深のことを新入生だとわかっていたが、成深は陽のことを先輩だと思っていた。
何しろ陽は、髪が茶色だし、目にはカラコンを入れて灰色だし、身長は高いしで、18歳にはとても見えない。
自然と敬語になるのも仕方ないだろう。

それにしても、カラコンを入れて、眼鏡をするというのはどうなのだろう。
まあ、どうでもいいことだが。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ