短編

□愛し方
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大勢の人が恋人や友人と待ち合わせをする休日のとある駅前
久しぶり!、待った?、とあちらこちらで声がする

ーーそんな中に一組のカップルが合流する


「シャル〜!お待たせ〜!」

「サラ!オレも今来たところ」

…シャルは格好良くて、お洒落で、優しくて自慢の彼氏!
今日は付き合って初めてのデートだから気合入れて支度したんだ


「サラ、可愛い…」

「やだシャルったら!嬉しい!」


…男女の関係は付き合う前が一番楽しいというけど、そんなことない
シャルと付き合えて、今が一番幸せ!


ーーそんな気持ちが打ち砕かれるとは



「どこ行きたい?」

「私、行きたいお店があるの!」

サラが示したお店は、最近オープンしたばかりのアンティークな雑貨や家具を扱うお店
可愛らしい雰囲気に清潔感のある店内
女性ファンが多いが、恋人達が同棲する際にこちらの家具が人気な様子でカップルもよく見受けられる


「うわぁ〜このマグカップ可愛いっ!」

「サラそれ欲しいの?」

「うん!買っちゃおうかな…」

「それならオレも色違い買おっかなぁ」

そう言うとシャルはサラが持っていたピンクのマグカップの隣に陳列されている、ブルーのマグカップを手に取った

「これ、買ってくるね」

シャルはサラの手からピンクのマグカップを取ると、自らのマグカップと共にレジへと行った

…お揃いのマグカップ…
初めてのお揃いの物が嬉しくて、ついつい顔がほころんでしまう

「あ、時計も可愛い〜」

サラは壁にたくさん掛かっているデザイン豊かな時計を、少し離れたところから眺めていた



レジを済ませたシャルは、サラの視線の先ーー

一人の男性を目にした




「ねぇ、今 他の男見てたでしょ」

「わ、!え、シャル?」

「サラ、オレじゃない別の男を見てたでしょ?何、素敵だなとか、付き合いたいなとか考えたわけ?」

「や、ちょっと待ってよ!男の人なんて知らないよ!」

身に覚えのない言い掛かりをつけられ、サラは困惑する


「今、サラ絶対アイツのこと見てた」

「違っ…!男の人じゃなくて時計見てたの!」

それはそれは、人気店の休日ともなれば店内は人で溢れる
否が応でも男性客は目に入るが、別に特段意識しているわけなどない




「信じられないな」

シャルは私の手を取り、店を後にした





無理矢理連れてこられたラブホテル

先程までと打って変わって注がれる冷たい視線
突然豹変してしまった愛しい人に混乱が隠せない

「……シャ、シャル…」

「脱いで」

「えっ、…」

「脱げって言ってんの、わかんないかなぁ」

シャルは明らかに苛立ち、サラの着ていた服に手をかける
ビリビリッ!と破ける音が響くほど乱雑に服を脱がされ、ショックと動揺で目に溜まっていた涙が流れた


「泣いてるの?悪いけど泣けば止めてやれるような優しさは持ち合わせてないから」

そう言い放つと、露わになった胸元へ吸い付く

「…あっ、…」

突然与えられた乳首への快感に身体は素直に反応する
子宮を収縮させ、受け入れる為に愛液を分泌させる

「無理矢理されて感じるの?サラはエッチな子なんだね」

「や、そんなことっ、!…んん!」

乳首を甘噛みされて、痛みからくる恐怖に腰を捩らせる
それを快楽と捉えて勘違いしたシャルは更に愛撫の手を強める

「や、はぁ、ッシャル、ンン‼」

「オレ以外の男わ見るなんて…、お仕置きが必要だよね」

冷めた笑顔を見せると、まだ慣らされていない秘部にググッ と熱り立った自身を無理矢理挿入され、サラは身体を強張らせる
幸い、滴るほどに濡れそぼっていたソコは、突然の挿入をも何とか懸命に受け入れる


「く、あ、ァッ…、シャル、抜いて…っ」

「何で?ヨクない?オレじゃ満足できないの?」

「そ、じゃ、ない…っよ、シャル、が すき…」

「煩い、」


何を言っても聞き入れてもらえず、悲しい気持ちで心が満たされてしまった
そもそもはシャルの勘違いから生まれた現在の状況
サラはだんだん自分が置かれてる立場がおかしいものだと理解してきた


「……なんで、シャルは…、」

「…え?」

「私の話を…、何ひとつ聞いてくれないの…っ!」

強く言い放つとシャルは唖然として、サラを見つめている
涙が後から後から流れてくるが、構わず目を瞑りシャルに続ける


「そもそもっ…私はシャルが好きなの…、っ、だから、他の男の人なんて、見てないし…っ、」

「…」

「全部全部っ、シャルの思い込みだよ……ッグぅ!」

突如として首に強い圧迫感を感じて目を開けば、鋭い瞳でこちらを見下すシャルがいた
その手は首へと巻き付き、息の根を止めようと力を入れている



「ゔぅ…ぐ、…っ」

「…何様だよ オレに楯突きやがって」

「ゔ、ぁ、っ、……」

「お前はただ黙ってオレに突かれてればいいんだよ!」

その目は例えられないほどに冷たい
首への圧力よりもこの視線で呼吸が止まってしまいそうになる程

目の前が霞み意識が薄れてきたと思ったら、

「なーんてね」

全部嘘だよ、と手を離され、さっきまでの行為が嘘だったかのような穏やかな表情になる

「はぁ、はぁっ、……え、?」

「やだなぁそんな顔しないでよ!オレはサラのこと信じてるよ!」

「え、あ、え、うん……、」

コロコロと態度が変わるシャルに、サラの心は追いつかず 表情も上手く作ることができない

「気持ち良くしてあげるね」


繋がっていたことを忘れてしまう程の出来事であったが、律動が始まればそうともいかない
硬直した身体は次第に紅潮し、秘部は潤いだす
ゆっくり、ぬちぬちと厭らしく動く

「は、ぁ…っんぁ…」

「気持ちいい?サラ…」

「んっ、…うん、っ」

「オレも…凄くいいよ…」

身体を労わるように優しく動き、優しくキスをしてくれるシャルを見ていると、やはりさっきまでの時間は夢だったのではないかと思ってしまう


ーしかし、そんな思いは一瞬で消えた


シャルはどこから取り出したのかナイフを取り出し、こちらへ刃先を向けている
その目は最早、焦点が合ってないように思える


「サラ、サラ、殺されたくないよね?死にたくないよね?だからお願い」

オレを愛して、


その儚く、悲哀に満ちた表情に、サラは心が締め付けられた
きっと彼は過去に何か辛い思いをしたに違いない
誰か、自分の心を支えてくれる人を探し続けている
それがきっと私なんだと

サラは少しの誇りを感じた
自分ならシャルを救えるかもしれない、変えてあげられるかもしれない、と

「シャル…、私、シャルの傍にいるよ、ずっと、傍にいて支えるよ……! 私は味方だよ…!」

「サラ…」

腰を振るスピードが上がり一層強く腰を打ち付けたと思ったら、中でドクドクと鼓動を感じる


「……ック、」

「あ、はぁっ…」


…暫く抱き合っていた二人は、呼吸を整えて後処理をした
サラはシャルによって所々破かれた服を着る

「服…ごめんね」

切れた箇所を撫で、悲しそうな表情を浮かべるシャル

「…いいの、大丈夫」

「次は服買ってあげるね!」

「ありがとう、」

精算してくるね、とシャルは部屋を出た





ーー相手にこれでもかと恐怖心を植え付け、たった一握りの愛を注ぐ


「これが、オレの愛し方だよ」

ボソリと呟くシャルの顔は恐ろしく真剣だった



end
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