短編

□かぼちゃのイタズラ
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「ねぇ、何これ」

トイレへと席を立ったイルミが大きな目をパチクリさせながらサラに問う


「ん?あぁ、それかぼちゃだよ〜」

「かぼちゃ?かぼちゃって、中がオレンジで煮物とかスープが美味しいあのかぼちゃ?」

「ふふ、そうだよ〜」


イルミが驚くのは無理もない
サラの家に置かれているそれはハロウィンかぼちゃであり、その名の通りよく街中で見かける、あの外側がオレンジ色のかぼちゃのことである


「へー初めて見た 中は緑?」

「いや…中も普通にオレンジだよ。中が緑なんて視覚的に嫌だよ」

そうだよね、と言うイルミは気になるのかそのかぼちゃの前から離れない


「ねぇ、今日それで ジャック・オ・ランタン作ろうと思うんだけど、」

「ジャックオランウータン?」

「…なんか惜しい。ランタン、見たことない?かぼちゃに顔があって、

「わかる わかった やる」

食い気味でノッてきたイルミは大抵ウキウキしていることが多い
現に表情も楽しそう(に見える)


「うん、じゃあやろう!」





新聞を広げた中央にかぼちゃを置いて、とりあえず顔をペンで書いていく
サラが一通り書くと、イルミは底をナイフで開いて中身を全てくり抜いた


「………疲れた」

「意外とかぼちゃ硬いもんね、よし!このかぼちゃ食用だから、私この中身でシチュー作るね」

「しちゅー好きだ」


微笑んでいる(ように見える)イルミに中身をキッチンまで運ぶように言って、サラは先ほど書いた顔をくり抜く


「できたっ」

出来たかぼちゃの顔は笑顔を貼り付けたヒソカに似ており、何だか可愛らしい
その中にろうそくを入れて灯せば、見事なジャック・オ・ランタンの出来上がりだ


「わ 凄い、店とかで見るやつだ」

「意外と簡単にできるでしょー?あー楽しかったぁ」

「サラ、しちゅー」

「あぁ、そうだったね、イルミせっかくだから一緒に作ろうよ!」


サラの提案によりイルミも共に手伝うことになった
サラが持っている中で一番地味なエプロンを着けて、長い髪を後ろでひとつに纏めたイルミは まぁ可愛らしい

「何すればいい?」

「じゃあね、鶏肉切って?」


鶏肉が入ったパックを手渡して、サラはジャガイモに取り掛かる
玉ねぎや人参、ブロッコリー、そしてメインのかぼちゃ……
思っていたよりも手際の良いイルミのおかげであっという間にシチューが完成した


「ん〜いい香り〜!ご飯にしよっか!」

「うん、しちゅー食べる」

「ずっと思ってたけどイルミ、シチューの言い方可愛いね」

「…………え」

「そんなに口尖らせなくても チューの発音でき んぅッ、」

突然イルミの唇に口を塞がれた
可愛い は褒め言葉のつもりだったけれど、イルミは馬鹿にされていると捉えたらしい

「…っ、どうしたのいきなり…」


「クク、ホントにいきなりだったねぇ☆」

「えっ!?ヒソカ!?」

「………何でいるの」

突然 音もなく部屋に現れたヒソカ
キスしているところをを見られてしまった恥ずかしさでサラの顔は真っ赤になる

「何だかいい香りがしてねぇ、気がついたらココにいたよ♤」

「知らない、帰れ」

「せっかくココまで来たんだ♧ まだ帰りたくない☆」

「勝手に来たんだろ、誰も招いてない」

「お、ボクに似てるカボチャさんがいるなぁ♢」

「それカボチャさんじゃなくてジャックオランウータンだから」

「へぇ…随分と野性的な名前だねぇ…」


二人の会話を聞いていると何だか微笑ましいというか、なんだかんだ仲の良い友達なんだと思えてならない

気がつくと くすくす笑ってしまっていた

「…サラなんで笑ってんの」

「ふふ、いやなんかイルミにも友達がいて嬉しいなぁなんて」

「友達じゃないよこんなの」

「こんなのだなんて…イルミはボクをなんだ思ってるんだろうねぇ☆」

「変態」

「………せめて奇術師をつけておくれよ♤」

「まぁまぁ、二人ともそこまで!ヒソカもよかったら食べて行って!たくさんあるから」

「ご馳走になるよ♡」

なんだかむくれている(ように見える)イルミに食器を出してもらって、シチューを盛り付けていく
彩りも綺麗な温かいシチューが3人分、テーブルに並んだ

「いただきます」

サラに続いてイルミとヒソカもそう言うとシチューを口にした

「んー!美味しい〜〜」

「うん、美味しい」

「そうだねぇ☆ 具沢山だし、ハロウィン意識でかぼちゃが入ってるのがいいねぇ♡ 強いて言えば鶏肉をもう少し薄く切ってしっかり火を通した方が食感が

「ヒソカうるさいよ」

「うんうん」

「……美味しいデス♤」


あっという間に皿は空になった
おかわりを求めた二人に盛ってあげて、それもまた完食する頃、ロウソクの火が消えた


「あら…ヒソカ消えちゃったよ」

「ちょっと♢ ボクはいるよ♧ しかし本当に似てるなぁ…」

ランタンを持ち上げて、恍惚な表情を浮かべるヒソカ

「ボクのことを意識しながら掘ってくれたのかい♤?」

「そんなわけないから」

「う〜ん、冷たいなぁ☆」


ランタンを置くと、ヒソカは窓に向かっていった


「サラ、イルミ、treat or treat ☆」

「え、あっ、ごめん…うちお菓子置いてない…」

「え、何 お菓子がいるの?」

「うん、トリックオアトリートっていうのは、"お菓子くれなきゃイタズラするぞ"って意味なの」

「しちゅー食べたんだからワガママ言わずに帰れよ」

「まぁまぁ、これはハロウィンの謳い文句みたいなやつだからさ、そんなに気にしなくても」

「クク、そうだと思ったよ♢ じゃあね ご馳走様♡」


それだけ言うと窓から飛び降りていったヒソカ

「なぁんだ、からかっただけだね」

「ヒソカむかつく」

「イールミ、トリック オア トリートッ」

「…お菓子ないけど…イジワルしていいよ」

「イルミ、イタズラね」


………


そして二人の甘い夜は更けていった………




…二人がランタンに仕込まれた盗聴器に気付くのは翌朝のこと。


end
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