ネオロマ

□君に僕の言の葉を
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「光莉ちゃん」


今はもういない人の名を 蒼い空を見上げてつぶやいてみる

いくら呼んでも 答えてはくれないと分かっているのに

君の名を……








彼女の亡骸を前にしても

涙ひとつ出てこない

悲しいはずなのに なぜだろう




そういえば どこかで聞いたことがある

“本当に悲しいときは涙は出ない”




「本当だ。全然出てくる気配がないよ」




でもそれは彼女の死を実感できてないからなのではないか

まだ生きているんじゃないかという思いが

胸の中にあるから





なぜ 俺を残して先に行ってしまったんだ

これだから 戦乱の世はキライだ

といっても戦ってばかりの世の中しか知らないけれど





「光莉ちゃん」





もう一度、愛しい人の名前を口にする

それでもやはり答えはない

少しずつ 希望が消える

彼女はもうここにはいないのだと

もう戻っては来ないのだと





「光莉ちゃん……光莉ちゃん!」






自分が抑えられなくなってくる

俺も 君の後を追いたいよ



けど俺には……

軍奉行としての役目が残っている

君の仇は必ず討つ

その後で そっちに行くから






今は 君に言の葉を送ろう








“光莉ちゃん、向日葵のような君を愛してるよ 今までも、これからも” 
 

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