ネオロマ
□俺様な恋の手解き
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本当は、お前のこと知ってたんだぜ?
俺が生徒会の手伝いでエントランスに行った時、お前を見つけた。
お前は普通科なのに音楽科のヤツと話していて、なんてずうずうしいヤツだと思っていたんだが。
後からあれは男のほうから話しかけたと聞いて驚いたものさ。
そういえば、顔もそこそこ良い方だったと思う。でも、この学院にはもっと美人もいるはず。
もっとも、そんな美人はあの男には勿体ないだろうけどね。
などと、なぜかお前の事で考えを巡らせてしまう自分に失笑した。
それから数日後。
例の男を見かけた。いつもなら会釈で終わらせるんだが、俺は男に声をかけてしまっていた。
「ねぇ、君。この前普通科の子と話していただろう?どうしてかな?」
「ゆ、ゆゆゆ、柚木先輩っ?!」
まぁ、この俺に声をかけられて焦るのは分かるがそんな反応はどうでもいい。
「どうして?」
笑顔でもう一度たずねる。
「あ、あいつは幼馴染なんです。ピアノをやってて…。音楽科に入るように言っていたんですっ。けど、その、イヤだ……って。でも、あいつちょくちょくオレのクラスに来たりするもんですから、音楽科にも知り合いが多いんすよ」
「そう。名前は?」
「……長瀬豊です?」
「そうじゃなくて、その子の名前は?」
「あ、あぁ。えっと――――」
「天羽光莉、か。」
よく考えるとここまで1人の人間、しかも異性に固執したことなどなかった。
「ははっ、俺らしくもない」
最初から俺らしくなんてなかったんだ。
誰と誰が話していようと俺に関係してこない限りは無視してきたのに。
なぜか長瀬とか言うやつと楽しそうにしているお前にイライラしていたんだ。
それでも優等生という言葉が俺を縛っていて、「気になる」以上の気持ちに気づかないフリをしていた。
そんな時、お前が日野香穂子の知り合いだと分かった。
なんだ、意外に身近なヤツだったんじゃないか。
幸い今はコンクール中、日野の友達なら俺が話しかけても、問題はないよな。
「ははは……」
こんなことぐらいで気分が上がるなんて
「俺も落ちぶれたもんだ」
俺は自嘲気味に笑い、それでも清々しい気持ちで、解釈の練習をしているであろう日野の元へ。
きっとお前もいる、そう思ったから。
「やぁ、日野さん。頑張っているね。そっちの子は?」
「あ、柚木先輩。この子は私の友達で……」
日野が如月を肘でつつく
「あ、えと、天羽、光莉、です」
お前がうつむいて小さく名前を言っただけなのに、なんだか幸せな気持ちになった。
「そう、初めまして。天羽さん、よろしくね」
さぁ、これからどんどん俺に惚れさせてやるから
覚悟してろよ?
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