ネオロマ

□大切
1ページ/1ページ




彼女を意識しはじめたのはいつ頃からだっただろう、と。
いつからかも思い出せないくらいに自然と好きになっていた。


年齢だって離れているし、君にとって俺は「お兄さん」くらいにしか映っていないのだろうけど…。
それでも君を、好きでいていい…かな?





「こんにちはー」

「ああ、天羽さん、こんにちは」

「王崎先輩こんにちは!あの、火原先輩は?」

「…まだ来てないよ。火原君が来るまで俺と話してない?」

「はい、喜んで」






放課後になると必ず音楽室に来る君。
でもそれは俺じゃなくて、彼に会うため。


分かってる。



けど、彼が来るまでの少しの間は、
君を独り占めしたい。





「そしたら火原先輩が――」

「火原先輩ってば――」






俺と話しているのに彼のことばかり。
彼の名前を君が口にするたびに
俺、傷ついているんだよ?
分かっててやってる?




……君がそんなこと出来るわけないか。








「おーーい!光莉ちゃーーんっ」


君の名前を呼びながら大きく手を振る影。
君もそれに笑顔でこたえる。


俺には見せたことのない顔。
彼の前でだけ見せるはにかんだ顔。





君の笑顔が好きだから。
困らせたくないから。




この気持ちは胸にしまっておくよ。





大切な大切な……、




君の笑顔を壊さないように。









.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ