セクメン

□こんな恋でもいいですか
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俺、童灯卓巳は同学年のある人物に密かに想いを寄せている

その相手というのは同性の四九砂九兵衛

美形双子の片割れでどちらかと言うと先に溶け込んだのはこいつの弟のほうだった

四九砂八郎は九兵衛と違い行動的で明るいやつだった

舐められるのを嫌い強気な態度をとってしまうのは俺と似ていた

ただ単純に良い友人として付き合っていただけ

勿論、いつも一緒にいる九兵衛も

それなのに何時からだろう

九兵衛の仕草の一つ一つが気になり始めたのは


九兵衛と八郎は双子というだけあって容姿はかなり似ている

だが、付き合っていればそれなりに双方の違いにも気づいてくる

弟よりも落ち着いた雰囲気の顔立ちで文句なしのイケメンだと男の俺から見ても思う

大きくややつり気味な目に長いまつげ

白い肌に綺麗な髪

服の上からでも分かる細いがしっかりとした体つき

彼はいつでも優しく笑いかけてくれた

周りに自分勝手な人間が多いせいか
九兵衛は気をが利かせるのが得意な人間だと感じていた

弟が周りの茶化しに腹を立てる時もいつも真っ先に静止をかけるのはこの兄だ

それでも、どこか弟贔屓な彼は八郎を甘やかして好きなようにさせていた

そのせいで俺は九兵衛を自我の少ない根暗な奴と勝手に踏んでいた


しかし、月日を共にするようになりその考え方は変わっていった

彼奴は優しいんだ

優しすぎるほどに




正直、ぶっとんだ先輩や姉のいうことを聞くのは楽じゃない

そんな愚痴を聞いてくれるのも九兵衛だった


そして、話をすると何処か嬉しそうにしているものだから
どうかしたかと尋ねると「仲が良くて羨ましい」と

正直驚いた

そこで初めて気付いた

自分はそこまで本気でこの日常が嫌なわけじゃない

騒がしくていつも面倒事に巻き込まれるけれど
それはそれで楽しいんだと

そして、四九砂九兵衛という一人の男との出会いに感謝した日でもあった

綺麗に柔らかく笑う彼に
恋を自覚した日だ

自分がホモかどうかなんて考える暇さえなく
彼に思いを伝えた

「好きだ、九兵衛」


開け放った窓から吹いてきた強風で双方の髪が遊ばれる

顔ははっきりとは見えない





どれくらい経っただろう

ほんの数秒でも長すぎるほどに感じた


顔を上げればぽかんとした顔の九兵衛と目があった

目をまん丸にしてじっと見つめられた俺は改めて自分がしてしまった行為を悔いた


男が男に告白してしまったのだ

しかもこんな成りのヤンキーが
イケメンに

ここで男らしく終われる位なら今まで童貞などやってない

自分の顔が赤いのなんて見なくても分かる

何も言わない九兵衛に寧ろ恐怖さえ抱き始め声をかけざるを得ない

前が見えてるのか見えてないのか分からない彼の肩をぽんと叩く

すると、まさに跳び上がるほど驚いたという言葉がぴったりなほどにいいリアクションをした次の瞬間には俺の比ではないほどに顔を真っ赤にしていた

唇を固く閉じてふるふると震える九兵衛に罪悪感さえ感じ始めて
どう収集をつけるべきか迷っていたら

いきなり教室のドアが開いた

放課後誰もいないはずの校舎で誰がなんの用かと思いきや

ドアに立っていたのは八郎だった

九兵衛も唖然として立ちすくしていた


いつもと違う雰囲気に先ほどの会話を聞かれていたんだと直感する

弁解の余地もない

彼らの仲がただの兄弟の関係でないことくらい知っていた

しかし、兄弟だから関係ないと卑怯な言い訳をして
八郎の横から九兵衛を奪いとろうとしてしまったのだ

悪いとは思うがここまで来てしまっては男として引けない

九兵衛に潔く振ってもらうしかない

三人の中で沈黙が流れる

何を話せばよいか分からないでいると
黙りの後、初めて声を発したのは八朗だった

「九兵衛何してんだ?早く帰るべ」

「え、あ…あぁ」

さっさと教室を出て行ってしまった八朗の後を追うべく急いで支度する九兵衛

俺は見逃さなかった

教室を出る際の八郎の勝ち誇ったような笑顔を

自分に従ってくれる兄が嬉しいのだろう

兄弟を言い訳にしてるのは八郎も同じだった

家族だから何もしなくても自分から離れていかないと余裕をかましてられるのは今のうちだ

振り向きざまの九兵衛の唇を唇で塞ぐ

九兵衛のその後の反応も気になるが
今はきっと情けない顔をしているのだろう
とても惚れた相手には見せられない

これは宣戦布告だ

ファーストキスくれてやるよ、なんて

らしくないことを心で呟き
教室の外ですれ違った八郎にはドヤ顔をくれてやった

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