そのオトコ、甘党につき
□第二章 オレンジ色の夕陽
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あさひがはじめて作ったおやつ。
それはオレンジジュースに溶かしたゼラチンを混ぜて固めただけの、ごく簡単なゼリーだった。
まだ暑さを残す夏の夕暮れ時。
冷蔵庫から出したばかりのそのひんやりとしたゼリーを縁側に座って親子三人で食べた。
「おいしいよ。あさひはお母さんに似てお菓子作りが上手だな」
はじめて父に褒めてもらえた。誰かの為においしいものを作る喜びを知った日。
そのゼリーは、夕陽と同じ色をしていた。
その事は、あさひの心に鮮明な記憶として残っている。