うた☆プリ
□Overture
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ST☆RISHが自分の部屋(だと思っていた場所)に戻っている頃…
コンコンッ…
さくらは女子寮のとある部屋の前にいた。
プレートには「Haruka Nanami」と刻まれている。
「はい?」
部屋で引っ越しの荷ほどきをしていた春歌は、突然の来客に扉から顔をのぞかせた。
ひょこっと扉からこちらを伺う姿にさくらは…
『(ふふ…小動物さんみたい)』
と、頬に手を当てほっこり。
一方春歌は…
「(うわ…綺麗な人…)」
と、さくらに見惚れていたとはお互い知ることがないだろう。
「春歌〜どうしたの?」
春歌の荷ほどきの手伝いに来ていた元ルームメイトの渋谷友千香は、いつまでも戻ってこない親友を心配して声をかけた。
すると、その声に我に返った春歌は「えっと…」と目の前の来客に恐る恐る尋ねた。
『ああ、突然ごめんなさい。七海春歌さんですか?』
「あ、はい!」
『初めまして、今回マスターコースの寮母を担当する天音さくらです。
よろしくお願いしますね』
ふわりと笑うその姿はまるで花が咲くのよう。
ほーっと頬を染める春歌は自分も名乗るべきだと気づき、慌てて挨拶を返した。
「な、七海春歌です!こ、こちらこそよろしくお願いします!!」
ペコリと頭を下げる小動―…いや、少女にさくらはフフフッと笑みを浮かべた。
『そちらの方は?』
「あ、初めまして。春歌の友人の渋谷友千香です」
『天音さくらです。女の子は1人と聞いていたけど、2人だったのね。嬉しいわ!』
「ああ、いえ…私はここの寮生じゃないんです。ちょっと手伝いにきただけで…」
『あら、そうなの?残念…
でも、いつでも遊びに来てくださいな』
「あ、はい!ありがとうございます!」
ST☆RISH以外で同じ寮に住む人物はどんな人なのか不安もあった春歌だが、さくらの人柄を見て、ほっと胸をなでおろした。
さくらは、お近づきの印にとST☆RISHたちが来る前から作っておいたマフィンを春歌と友千香に渡したのであった。
〜おまけ〜
『蘭さん!お腹が空いていたでしょう?晩御飯までまだ時間がありますのでマフィンをどうぞ』
「別に腹なんて減ってねーよ!」
『カルシウムが足りないとイライラしてしまうと聞きましたので、牛乳も買ってきました!』
「おい、やけにでけーな、その牛乳…」
『たくさん飲まれるかと思って…』
「それでなんで業務用なんだよ!」
『あ、あとバナナと乳製品を一緒にとると脳にいいって聞きましたので、バナナも買ってきましたよ』
「………分かった。そこに置いとけ」
本人に悪気はない。
ただ、いちいち彼女に突っ込みを入れてもふんわりと受け止め流されるだけ。
なので、それすらも諦めた蘭丸を見た同じ部屋にいたレンと真斗は、彼の唯一の弱点はさくらなのだと記録された。
しかしその後。なんかんだ言って毎日のように朝昼晩と牛乳を飲む蘭丸の姿があったのでした。