ヒロインの(非公式)妹はモブ兼、隠れサポーターを目指します
□騎士たり得る者と非公式妹
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アーサー・ベレスフォード。
親父とお袋からもらった俺の名前だ。
昨日、騎士を目指すことを決意し、俺の人生も大きく変わった。
そんな俺は今……
第一王子と第三王女と共に王族専用の稽古場にいる。
なんで…こんなことになったんだ…?
確か…まず、親父が家の庭に忘れた剣を届けに行って…
そこにはプライド様たちがいて…
プライド様が親父に団服を返して…
(そういや、なんで親父は爆笑していたんだ?)
気がついたら、馬車の中でプライド様とティアラ様とシルヴィア様、馬車の外では傍の馬に乗るステイル様…じゃなかったステイルの王族四姉弟に囲まれてて…?
そうだ。
ステイルと一戦稽古しながら友人となって一休みしようとしたところだったんだ。
王族専属の女官に渡された飲み物を一口飲んだ時、ほどよい甘みを感じた後、レモンの匂いや味がやってきて、「美味っ!」と思わず声が出た。
「気に入ってくれたか?」
「ああ!流石王族の飲み物だ…こんな美味い水、飲んだことねぇ!」
「普段飲むには、酸っぱいけどな…こうして身体を動かせた後や熱い日に飲むと、ちょうどいい甘さを感じるんだ」
「へぇ…不思議だな…」
こんなに上手いのに、稽古以外では酸っぱくなるとは…試してみたいけど、そうはいかないか…
もう一口…と口に付けようとした時…
『青春だな…』
と、何か聞こえた。本当に小さく、聞き逃してしまいそうなくらいだったが…確かに女の子の声だった。
ステイルもグラスの手を止め、周りを見渡すと、扉の方に視線も止めた。
同じ方向へ顔を向ければ、少し開いた扉には誰もいない。
……と思いきや、視線を床に向けると紫色のレースがちらりと見えていた。
ステイルは近くのワゴンにグラスを置いて、瞬間移動で扉へ。
そういや、瞬間移動の特殊能力者だったな。
そっとノブに手をかけて、扉を開けた。
『あ…っとと…』
本を抱えた第三王女、シルヴィア様がいた。
扉に寄りかかっていたからなのか、ステイルにそれを開けられて、転びそうになっていたが…すぐに体勢を正した。
流石王女様…。バランス力、すごいな。
何事もなかったかのような、涼しい顔をしたシルヴィア様は…
『失礼します』
と、どこかへ行こうとした。
当然、ステイルが許すはずもない。
「ちょっと話をしようか」
そう言って、シルヴィア様の手を握って俺の元へ連れて来た。
で、こうなったわけだが…
「いつから見ていたんだ?」
『……“じゃあ、まず僕から敬語やめる。それで君も僕を友人と認めてくれるなら同じように――…”』
「もういい、分かった。つまりほぼ最初から見ていたのだな」
こくりと頷くシルヴィア様。なんて潔い。
そんな彼女に頭を抱えてはぁ…と深いため息を吐くステイル。気持ちは分からなくもない。
「……姉君とティアラは?」
『別室にいます。ティアラが騎士団兵たちの笑っていた理由がよほど気になるようで、お姉様へ問い詰めていました。お姉様も頑張っているようで…』
「助けてやれ」
『私には荷が重いことです』
「で、君はなぜここに?」
『偶々通りかかりました』
「吐くならマシな嘘をつけ。最初からバッチリ聞いていただろ」
『お兄様たちの方も面白そ……いえ、気になりましたので、様子を見にきた次第です』
今、面白そうって言おうとしなかったか?
ますます、この第三王女のことが分からなくなってきた。
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