Bullet of the promise

□第五一話
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昴SIDE



すっかり日が落ちた時刻。





夕食を食べ終え、別荘内にある書斎で読書をする。




ほかの人たちは昼間行った近くの旅館の温泉を入りに行ったが、事情があり個室にある浴室を使わせてもらったのだ。




子供たちがいないせいか、別荘内はとても静か。





だが、ここにある本は、九条さんやその両親が医者のためか医療系の本が大量にあるが、それと同じくらいミステリーものがあって、飽きずに過ごせる。





そう思いながら読み続けると…












♪〜♪〜〜









「?」






どこからかヴァイオリンらしき音が聞こえ、本から顔を上げる。





CDを流しているだけかもしれないというのに、俺は何故か読んでいた本を置き、音のするほうへ足を動かした。














______
____
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導かれたように歩き、着いた先は別荘の離れだった。



気配を消しゆっくりと静かに扉を開けて中に入ると、そこにいたのは……










友梨奈…









広い空間に響き渡る美しい、しかし悲しいヴァイオリン



窓を開け、差し込む月光が彼女の姿を照らす。






そんな彼女を見ていると、後ろから誰かに肩をたたかれた。



振り向くと、七条さんがは口元に指を当て“静かに”というジェスチャーをする。





彼が前を向いたことに今でも弾き続ける彼女を再び見た。









バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番








クラシックはあまり詳しくないため、彼女の弾く曲は当然わからない。


小声で隣にいる男に聞くと、彼は前を見ながら静かに答えた。









「友梨奈さんがヴァイオリンが弾けるとは、初めて知りました」



「ここでしか弾かないから、無理もない」



「いつもああやってヴァイオリンを?」



「ああ。友梨奈の母親もここに来るたびに弾いていた」



「友梨奈さんのお母様も?」



「俺たちが生まれる前からここに来ることは恒例行事のようなものだったからな」



「では、友梨奈さんもそれを引き継いで?」



「…決して“そうしろ”と言われたわけではない。だが、よく友梨奈は無意識に両親のあとを追っている。


刑事になる以外はな…」









そういえば…




両親の細かいところまで追っていると思いきや、今や友梨奈は刑事ではなくFBIに入っている。



確か、彼女が14歳の時に両親を亡くしたと有希子さんから聞いた。




それと何か関係があるのだろうか…








そう考えていると、ふと音が消えた。


聞きほれて閉じていた目を開けると、友梨奈が楽器を片付けていた。








「もういいのか?」



『一曲弾くだけだったから』







七条さんが部屋の電気を付け、友梨奈に近付いた。






「…ここにも随分本がありますね」



『ここにあるのは全部楽譜ですよ。劉のお母さんが母のために集めてくれたんです』



「そろそろ小五郎さんたちが戻って来るだろう」






七条さんの腕時計で時間を確認し、俺たちは部屋を出た。









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