HQ×黒子夢小説
□第6試合 おにぎりちゃんとフクロウたち 練習試合
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「レフトレフト!!」
「ナイスレシーブ!!」
体育館に響きわたる選手や応援の声。
点数が入るたびになる笛の音。
ギャラリーに立つ観客たちがちらほらいるが、予想より多くはなかった。
(メガネ、いつもと違うのだからバレないよね…?)
と、眼鏡のフレームをあげながら、観客たちに紛れる。
(あれ…?)
確か彼は試合に出ないと言っていた。
なのに、何故…?赤葦君がコートの中にいるのだろう?ポジションからして、セッターだ。
最初から観ていただろう近くにいる人に「あの…」と尋ねる。
『今のセッター…一年生ですよね?』
「ああ。3年の正セッターが捻挫して途中交代になったんだ。多分、実力を試したいんじゃないかな?」
親切に教えてくれたおじ様に軽く頭を下げ、試合を観る事にした。
「ワンタッチ!」
「カバー!!」
「ナイスレシーブー!!」
ボールを協力して繋げ、勝負するスポーツ。
点が入ったら喜び、入れられた悔しがり、活躍したら褒め合い、失敗したら励まし合う。
決められたコート内で繰り広げられるドラマ。
「あかーしー!!」
「木兎さん!!」
赤葦君のトスから木兎先輩のスパイクが決まる。
「よっしゃー!!」と声を上げ喜ぶ彼らをただただ見ていた。
父が元バレー選手だったため、物心ついたときにはバレーは日常の中に溶け込んでいた。
それと加えて、父の知り合いの影響でいつの間にかバスケもする時間も多くあった。
昔から、のんびりしているみたいで、そのせいか分からないけど、小さい頃から物を隠されたり、机や私物に落書きされたり…例えを上げるとキリが無いくらいレパートリー様々な出来事があっても別に気にしてなかった。
通っていた学校は小学4年生から部活に入ることが出来る。
だから進級したら、当たり前のようにバスケ部に入った。
入部して間もない頃、初めて選手として試合に出て、初めて勝った時の高揚感を覚えている。
その反面、年下である私に選手としての座を奪われたことが気に喰わず、嫌がらせをしてくる先輩たちもいたみたい(当時は気づかなかったけど千鶴が言ってた)。しかしそれも放っていて、バスケの事ならバスケで黙らせればいいやと実力を上げていけば、勝手に治まった。
小学5年の頃。階段から落ちて足を負傷。
大したことなかったけど、医者から無理をすれば将来苦労すると聞かされ、退部せざる負えなかった。仕方がない、と思っていた。
でも、一つ上の従兄が怒って教室まで怒鳴りに来たことは今でも覚えている。
中学に上がり、クラスメイトの誘いで男子バスケ部のマネージャーとして入部した。
中学の男子バスケ部は全国で有名なほど強豪だったから、部員の数も100を超え、実力テストにより、1軍から3軍と分けられていた。
実力があった1軍は人気でファンも多く、ここでも嫌がらせはあった。
でも、一緒に時間を過ごすなか、おバカな事して(いるのを見ていたり)、試合に勝ったら嬉しくて…
時々、女子バスケの練習試合に参加したことあったっけ…
そんな時間が充実していて、マネージャーの仕事もやりがいがあって…
私の知らない世界に興味があった。
だから何を言われようと部活を止めることはなかった。
でも…中学3年の全国中学校バスケットボール大会。
その大会の試合はどれもひどいものだった。
そして…決勝戦の試合を見て気づいた。
私は間違えてしまったのだ、と。
夢から覚める感覚と同時に自分の中で何かが切れた。