HQ×黒子夢小説

□第6試合 おにぎりちゃんとフクロウたち 練習試合
1ページ/4ページ







〜赤葦SIDE〜









「そうか。じゃあ、今度の試合次第ってことか…」


「はい。すみません、勝手な事をして…」








瑠璃咲さんと約束をした日の放課後。
部活の休憩中に主将と雀田さんたちにそのことを話した。







「いや。木兎みたいにガムシャラに誘うより、その方がいいのかもしれない。あの単細胞がすまなかったな」


「いえ…。俺も瑠璃咲さんにマネージャーをして欲しいと思っているので…」







同じクラスの瑠璃咲ナズナさんは、入学してたった数日で1年生の中のちょっとした有名人となった。

別に問題行動を起こした「不良生徒」でも、「人気者」っていうわけでもない。
原因は彼女がいつもかけている漫画のような丸メガネ。
それ以外はただ大人しく、自分の机で本を読んでいるだけの女の子だ。

だが、噂の原因となったメガネのせいか、彼女の幼馴染以外の人と距離がある。



「無表情」「暗い」「地味」「どんくさいそう」から「メガネの下は見てられないほど醜い顔だ」とくだらない噂まで流れていた。









『?何かあった?』







でも、あの日から俺の中で何かが変わった。

あの時そう言った彼女の姿が頭から離れずにいる。
ただの大人しい子と思っていた瑠璃咲さんに違和感を感じた。他の人とは違う、何かを…。


「彼女を知りたい」と思ってきた。





木兎さんに気に入られ、毎日バレー部に誘われる瑠璃咲さんが気の毒に思いながらも止めなかった。

だって、俺も彼女にマネージャーやってほしいと思っているから。
毎日誘いに来る木兎さんに断るだけで何も言わないってことは、もしかして少しでも可能性があるのかと期待もした。





ある日。木兎さんの突進に限界が来たのか、瑠璃咲さんは授業終了直後、弁当を持って教室を出た。

それはもう、とてつもなく速かった。









「あれ?あかーしーーー!おにぎりちゃんは?」


「瑠璃咲さんでしたら、木兎さんが来る前に教室出ていきましたよ」


「なに!?」




瑠璃咲さんが教室を出た数分後。
彼女の予想通り、木兎さんが勧誘しに教室にやって来た。




「何で!?」


「木兎さんが毎日しつこく勧誘するからじゃないですか?」


「………。」








あ、しょぼくれた。

まだ入部して数日しか経っていないのに、なんとなく木兎さんの事が分かるようになった。
自主練に付き合ったりしてるからか?


とりあえず、しょぼくれ木兎さんと弁当を食べ、自主練に付き合うと言ったら復活した木兎さんを早めに自分の教室へ追い出…失礼、戻す。





しかし、瑠璃咲さん。一体どこに行ったのだろうか…。

こういう時は、彼女の事を一番よく知っているだろう、彼女の幼馴染に訊くのがいいだろう。
そう思って同じクラスの九条さんのもとへ行こうと思っていたが…





「ねえ、赤葦君」




先に彼女の方から来てくれた。そういえば、彼女も密かに有名人だ。
瑠璃咲さんの幼馴染だという事もあるが、そのほかにも理由がある。





すらっと背が高く整った顔立ち。


さっぱりした性格は男女共に人気がある。


空手部で一年生にして期待の部員だと誰かが騒いでいた。




そして…










「最近うちのクラスに来るあの先輩、あなた達バレー部の先輩なんでしょ。いい加減、手綱ぐらい繋いでおいてくれない?いくら“私の”ナズナが可愛くて優しいからって、毎日毎日あんな派手に勧誘しに来たら困るに決まってるじゃない。特に“私の”ナズナは人見知りで恥ずかしがり屋なんだから勧誘するならもっと普通の方法でしなさいよ――…」











超幼馴染バカだという事。

わざわざ“私の”と強調し俺に文句を言ってくるクラスメイト。
「さっぱりした性格」が売りである人物だが幼馴染のこととなるとそんな肩書きが皆無に等しい。





「ごめん。でも、俺も瑠璃咲さんにマネージャーになってほしいから止めなかったんだ」





本当のことを言うと何故か目の前の幼馴染バカは片眉を器用にピクリと動かした。
気づかないフリをして瑠璃咲さんが何処に行ったかを問うと意外とすんなりと教えてくれた。

彼女には、なぜか瑠璃咲さんがマネージャーを断るという自信があるみたいだ…
九条さんに礼を言って、すぐに立ち上がりその場所へ行ってみた。




その後、瑠璃咲さんに練習試合に見に来るよう誘い、試合を見て何も興味を持たなかったら、別の策を考えると約束した。


自信はある。
だって、何も感じないようなバレーを先輩らがしないってことが分かっているから。










〜SIDE 終了〜
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ