HQ×黒子夢小説
□第13試合 おにぎりちゃんと選手
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いつも起きる時間より1時間も早く起きたから、久しぶりに身体を動かそうとベッドから降りて、寝巻からジャージに着替える。
ここ最近、そうだ。
早く起きたら、ランニングやバスケ、バレーなど体を動かすようになった。
まるで、中学の時のように…
そうしようと思ったのは、きっとあの合宿のせいだ。
自由にバレーをする木兎とその仲間たち。
同じクラスの赤葦も勿論それに含まれる。
もともと運動をしていたナズナにとって、影響されるのは不思議なコトではなかった。
いつもの眼鏡では運動に適していないため、専用のサングラスを嵌めて、玄関の扉を開けた。
『ハッ…ハッ…ハッ…』
走るたびにまだ肌寒い空気が頬を撫でる。
腕時計を見るとまだ時間があることからもう少し遠くに行こう、と頭の中でルートを作る。
暫く走り続けていると、ダム、ダム…と聞き慣れた音。
気にすることなく走り続けていたが、前方にボールが転がってきた。
それは、もう触れることないと思っていたバスケットボール…
「わりぃ!ボール、取ってくれ!」
左から声が聞こえて振り向くと、ストリートコートに立つ、一人の青年。
燃えるような赤い髪に、がっちりとした体…
(同じ赤い髪なのに…)
彼とはまた違う色だ、と青年を見てそっと思う。
中学でバスケ部をやめて以来、来ることのなかったストリートコート。
無意識に近くを通るルートを走っていたことに、ナズナは少し驚いていた。
転がっていたボールを持つと、経った数日しか経っていないのに懐かしく感じる。
重さ、大きさ、皮膚に伝わる感触…
ナズナはじっとボールを見つめると、コートの入り口へ歩み寄り…ポンッ、と軽くボールを放った。
思い描いていた弧にボールが沿って、バスッとネットに潜る音がした。
唖然とする青年に気にすることなくランニングを再開。
後ろから何か言っている声は、ナズナの耳には入らなかった。