HQ×黒子夢小説
□第14試合 おにぎりちゃんと“キセキの世代“
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5月下旬。ほとんどの種目は、インターハイ予選が始まった。
空手は日程が7月下旬からだが、予選に向けて練習試合が行われる。
千鶴に言われて応援に来ていたが、特に心配することなく圧勝。むぎゅむぎゅ、と抱きついてくる千鶴を引きづりながら下駄箱を目指す。
「ねえねえ、ナズナ〜今日はおじさんたち家にいないからうちでお泊まりなんでしょ?」
『うん、旅行に行っているから』
「やったー!じゃあ、どこかでご飯食べて行こう!もうお腹減ってさ…」
『千鶴はよく食べるね』
「しっかり食べて、力つけないと!」
練習試合前におにぎり3個食べてなかったっけ?
それなのにすぐにお腹が減るって…人間の体って不思議…
そんなことを考えながら歩いていると、窓の外から雨音が聞こえた。
「ありゃ…降ってきたね…」
『うん…』
夕方から雨の予報を伝えていたお姉さんの言う通り。
ぽつり、ぽつり…と地面に打つ音が早くなり、あっという間に土砂降りとなった。
「うわっ!俺傘なんて持ってきてねぇ!」
「天気予報で雨と言っていたじゃないですか」
下駄箱についたとき、出入り口からも聞こえる雨音混じりに馴染みの声が廊下に響く。
「赤葦君と…木兎先輩?」
「ん?ああ!おにぎりちゃん!」
『こんにちは』
もうとっくに訂正することを諦めた。この人は、「おにぎりちゃん」と呼んだり苗字で呼んだり…忙しい人だな…
「瑠璃咲さん達、どうして?」
「空手の練習試合。空手部のIH(インターハイ)は7月下旬だから、その練習。
バレー部はもうIH予選始まっているんでしょ?どうしてここに?もう負けた?」
「縁起でもないこと言わないで。1回戦なら勝ったよ。木兎さんのスパイク練に付き合っていただけ」
「他の皆さんは?」
「帰っちまった!」
「正確に言うと、際限ないから早々に逃げられた」
木兎先輩はいつも通りだけど、千鶴と赤葦君は…
「で、赤葦君が捕まってしまったのね。どんまい」
「顔が笑っているよ、九条さん」
すっかり仲良しだ。いつの間に…
「あ、そうだ!おにぎりちゃんたちも一緒にどっか食い行こうぜ!」
「……ナズナがいいなら…」
『別に構わない』
「よっしゃ!ってなわけで傘入れて、あかーし!」
「何が「ってなわけ」ですか…近くの店にしてくださいね」
ため息を吐きながら赤葦君は大きな黒い傘を広げた。