拝啓、愛しいあなたへ
□第2話
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拝啓、お姉さま。
早速ですが、リムル様のお話しを含めておさらいしてみます。
まず、ここはリムル様が治めるゴブリンの町。
住民が増えた事でお引越しをしたが近くにある泉(私の住処?)でケガして倒れている私を保護してくれたそうです。
何故、ケガをしていたのって?
泉に来たお客さんにやられちゃいました。
何でも、今の私は珍しい種族みたいで、捕まえようとするお客さんがたくさんいるみたいです。
いつものように泉の底で隠れていたら、今回は魔法で引き上げらてしまいました。
前にテレビで見た漁業のお魚さんみたいに…ええ、釣れちゃいました。
何やらお金になるとか名も挙がるとか言っていたけど、私ここを離れるつもりはありません。
そう意志を持って抵抗していたら、いっぱいケガをさせられてしまいました。
もちろん、お客さんはおかえりいただきましたよ。
命を奪うつもりはありませんから。
そして、休憩のつもり眠っていたところを引っ越してきたリムル様たちに保護されて…
今に至ります。
「結構大変なことじゃね!?どこが大したことないだ!」
『いえ…本当に大したことではないのです。ケガも泉にいたら自然と回復しますし、特にお引越しをする必要もなかったので…』
「そ、そうなのか…」
(肝が据わってんな…)と、リムル様がそう思っていたとは、知ることなくいただいたお茶を一口飲んだ。
あら、美味しい!
「俺たち、ココで町を作っているのだけど…泉に住むキミにとっては困るよな…?」
『なぜです?私はたまたまあの泉で生まれただけで、この周辺が私のモノというわけでございません。リムル様たちが町をお造りになることに私の許可など必要ありませんわ』
「そうか…提案だけど、俺たちと一緒に住まないか?」
『え?』
リムル様の提案に思わず首を傾げる。
「もちろん、そちらがいいならだけど…もともとキミが住んでる泉に俺達が引っ越してきたんだ。許可はいらなくても、同意は必要だろ?」
『なるほど…おっしゃる通りです。
お役に立てることは少ないですが、よろしくお願いします、リムル様』
「気恥ずかしいな…様じゃなくていいよ」
『では、リムルさんとお呼びしても?』
「うーん…(大して変わってないような…)まぁ、いっか…」
『?』
何やらリムルさんは不服そうなお顔をしていたけど…大丈夫よね。
「そういえば、珍しい種族って言ってたな
確かに魔素量が半端ないけど…何て言う種族なんだ?」
『えっと…ニンフ、だったでしょうか…』
「あの、失礼ながら…精霊女王のもとからはぐれてしまわれたのですか?」
エレメント…?聞き覚えのない言葉に首を傾げる。
『その、エレメント…?とは存じておりませんが…あの泉で生まれたものかと…』
「それは、また…確かに珍しいですね」
「そうなのか?」
「はい。ニンフは精霊女王のもとにいらっしゃるため、自ら姿を現すこともありません…それに、水のニンフはお生まれになることが少ないと…」
私、そんな種族だったのね…
ちなみに、魔素量とは…この世界のエネルギーで魔物にとって生命力の元となるもののこと。
知らなかった…また新しい世界のことをお勉強しなければ…
「なるほどな…そりゃ、狙ってくる奴もいるわけだ」
リムルさんはそう呟くと、少し俯いた。
そして、一時して再び顔を上げる。
「こうしよう!俺たちがキミを保護するかわりに、キミは俺たちの発展に協力する、というのはどうだ?」
『異論ありませんわ。私にできることがあるのであれば…住まわせていただく対価をお支払いします』
「まあ、正確に言うと、後から来た俺たちが住まわせてもらうことになるけどな…
それじゃあ、今後ともよろしくな」
『はい。』
ボディから手(かしら?)を出したリムルさんへ応えるように握手を交わした。
「キミ、名前は?」
『この姿に名前はございません』
「(この姿に…?)そうか…でも、名前がないと不便だな………すぐには思いつかないから、少し待っててくれるか?」
『……私に名前を付けていただける、と…?』
「ああ!イヤじゃなかったら…だけど…」
『もちろん、構いません。保護していただいたうえに名前も頂けるとは光栄なことです』
「そ、そうか…」
一部をほんのり赤く染めたリムルさん。
可愛らしい…
結局、「その日はゆっくり休むように」とリムルさんは出て行かれた。