拝啓、愛しいあなたへ

□第5話
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拝啓、お姉さま。
私の住む町も随分発展してきました。

カイジンさんたちの工房、上下水官道の設置(まだ準備中)…近々、畑も作られるそうです。
教会の皆と一緒に作った野菜を思い出します。

まだまだ、外から見たら「町」と言われるに遠いですが、私も力になれるよう…――




「姫さま!そのようなことは私達がします!」



「姫さまはこちらでお休みください」



『………まだ何もしていませんよ?』





(再び)力になれるよう……頑張ります。

私はどうやら、力仕事を任せられないようなので子どもたちと一緒に森へ果物を取りに行くことに。
子どもたちに手を引かれながら進めば、林檎やブドウがたくさん実っている地点に着く。

最近、森に住む動物型の魔物さんとお友達になりました。
一緒に果物などを持ってきてくださるので、お仕事も早く終わるので大変助かります。

いくつか頂戴してある程度の量がかごに入れたら、後は子どもたちのお遊び時間。
綺麗な花を見つけ、木のみを見つけ、新たな場所を見つけ…好奇心旺盛なところは魔物も人間も変わらないそうです。



果物と一緒にお土産を持って帰ったら、後は夕食の準備に取り掛かります。
基本、私の一日はこんな感じです。すっかり慣れました。


この町ではあまり料理というものを知らなかったようで、最初はお肉を生で食べるか少し加熱するくらいしかなかった、とハルナさんが話していました。
私がこの町で初めて食べた串焼きや焼き肉は、リムルさんの助言からできたそう…

やはり、彼も元日本人。
食文化に関しては手を抜けないところがあるようです。

そういうわけで、私も料理人ゴブイチさんとハルナさんと一緒に毎日美味しい料理へ勤しみます。






「ゴブイチさん、少しいいですか?」


『あら、こんにちはリリナさん』


「まあ、姫さま!こちらにいらっしゃったのですね」


『リリアーナと呼んでくださいな』



リムルさんは住人が増えたことでリグルドさんの負担にならないよう、4人のゴブリン・ロードを彼の部下に任命。
そのうちの紅一点、生産物の管理大臣のリリナさんは、穏やかな方で私ともお話しをたくさんしてくれます。


ただ、名前で呼ぶようにお話をしていたはずなのに、いつも気がついたら違う話題になっているのはどうしてかしら…?

決して、姫さま呼びを諦めたわけではありません。ええ、決して…。




『何かあったのですか?』


「いえ、リグルドさんから、今夜は宴会をするとのことです」


『宴会?何かお祝いごとでも?』


「はい!リムル様が一緒にお食事をされるそうです!」


「リムル様が!?」




私の隣で話を聞いていたハルナさんが驚いた声を上げる。ゴブイチさんも彼女ほど声を出すことはありませんが、可愛らしい小さな目を見開いていました。

この町の主であるリムルさんがお食事をされると聞いて、ゴブイチさんたちの緊張が伝わります。
彼の料理の腕はかなり上達してますから、自信をもってほしいです。


かくいう私もお世話になっている方に料理を振舞えると思うと、気合が入ります
宴会の時刻まであと数時間。

今できる最高の料理を作ろうと袖を捲りました。
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