未来へ
□第九話
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「海だーー♡」
青い空、白い雲
そして、広大な海。
目の前に広がる光景にあむたちは興奮がおさまらない。
そう、彼らガーディアンは“強化合宿”と称して、バカンスに来ていた。
〜第九話 強化合宿(?)〜
ことの発端は、最年長である空海からのお誘いだった。
数日前。
『強化合宿…ですか?』
クラスの仕事により、少し遅れてロイヤルガーデンに来たあい。
先に来ていた姉やその他のガーディアンたちは話に花を咲かせていた。
「そ!“合宿”ってなんか、部活って感じだよね!」
「最近暑いから、海とかいいわね」
「ビーチリゾートとか憧れるー!」
「行ってみたいな〜」
「「「ねー!」」」
『それで…どうして急に強化合宿を?』
突然の合宿の話に真意が分からず、男子組に経緯を聞く。
もしかしたら、イースターのことと何か関係があるのだろうか、と。
が、その答えはあいの予想からかけ離れていた。
「親睦会だ」
『はい?』
「日奈森さんたちがガーディアンに入ってまだ日は浅いからちょっと遠出して、みんなで親睦を深めようってことになったんだ」
「名付けて、“親睦を深めてパワーアップ合宿”だ!」
「いざというとき、連携プレーができるようにね」
ネーミングがそのままであること、それは強化合宿と言うより遊びに行くというものではないか…と、突っ込みたいことは山々だが、胸に仕舞うだけにした。
で、その強化合宿(遊び)の行き先は、あむたちのビーチリゾートに行きたいという願望から…
「よし!じゃあ、オレが連れてってやる!」
と言う空海のお誘いにより、決まった。
「青い海、キラキラの砂浜♥さわやかな潮風…」
「ふりかえればもうそこは…
墓だーーー!!」
「ギャー!!」
目の前にあるのは海と不似合いな墓地。
期待を膨らませていたあむたちの想像に亀裂がはいった。
「海にバカンスのはずがナゼお墓に!?」
「いーやーっうそーっ」
「おーっついたな、オレらの宿泊先」
『あの…もしかして、あのお寺が…?』
「そ!」
墓地の先に突飛出て見える寺。
どうやら、あの寺が空海のおじいさんの家だそう。
「空海!話がちがッ!」
「どこがだよーだっておまえら、ビーチリゾートにいきたーいっていってたじゃん」
「コレビーチリゾートちがーう!」
「なにぃ〜〜人がせっかく“夏の特選ツアー★全室オーシャンビュー、オレのじいちゃんち”に招待したとゆーのに」
「そうそう」
『“親睦を深めてパワーアップ合宿”じゃなかったんですか?』
「細かいこと気にすんな、日奈森妹!」
ネーミングの問題は置いておいて…
空海があむたちに言ったことはあながち間違っていない。
ただ、おじいさんの家がお寺だと言うことを話していないだけ。
日本語って難しいな、と思うあいであった。