悪魔執事と黒い猫 夢小説

□第1夜
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にゃ〜お…


仕事の帰り道。

晩御飯は何にしようかと考えを巡らせていた。
今日まで頑張った自分のご褒美は何にしようか…しばらく貯めていたお金のおかげで生活に困ることはないから、そろそろ今の仕事を辞めてゆっくりしてもいいかな…
そう思いながら街灯と月明かりだけが頼りの道を歩いてる時だった。


一匹の黒猫が月華の前に現れる。




『あら?』



くりっとした目がこちらを見つめるその子はなかなかのいい顔立ちだ。



『かわいい…』


にゃ〜お…とすり寄ってくる猫の背中をそっと撫でると、気持ちいいのか、またひと鳴きする。その側でキーンと音がした。



『ん?何かを落としたよ』


下を見ると、そこには猫が持ってきたであろう指輪が転がっている。
金色に輝くその指輪は、少々お値段をするのではと思うくらい立派なものに見える。



にゃ〜お…


『あ…』


しかし、その指輪と月華を置いて猫はタッタッタッ…と軽い足取りで走り去ってしまった。



『猫さん、落とし物ですよ…』



童謡の歌詞に出てくる森の熊なら追いかけるものだが、相手は身軽な猫。
受け取ってもらうことなく虚しく輝く指輪へ視線を向ける。



『綺麗な指輪…純金なのかな?』



持ち主が不明の指輪。
好奇心が勝り、試しに指輪をはめてみた。

次の瞬間…急に意識が遠のく感覚。




(あ…残業の疲れかな…)






ドサッ…ーーー




なんて考えながら、月華は意識に身を委ねた。










目を開けるとあたりは真っ暗だった。その暗闇に紛れてポツン、と赤紫の瞳がこちらを見ていた。



(あれは…さっきの黒猫さん?)



「こんにちは。」


『こんにちは。』



暗闇に紛れるその猫から聞こえた声に思わず返す。




「人はみんな、心に闇を抱えながら…毎日なんとか生きている。
歩みを止めれば、すぐにバランスを崩してしまうから、なるべく苦痛を感じないように…わざと意識を鈍らせながら…」


『?…うん。』


「そして、気がつけば時間が流れて…少しの後悔を抱えて死んでいく。私…あなたにはそうなって欲しくないの」



猫が言っていることは理解できるが…私にもとは…?



「そして…彼らにも…」


『彼ら…?』


「お願い。彼らを助けてあげて…みんながあなたを待っている」




一体何の話だろうか…
助けてあげて、と言われてもその彼らがどこにいるのか不明だ。



「大丈夫…すぐに分かるわ」



心を読まれたかのように、猫は答えた。




「さぁ、目を開けて…。また会いましょう…」




それだけを残して、猫の声が遠くなってしまった。
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