悪魔執事と黒い猫 夢小説
□第4夜
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「この屋敷の主様は…月華様、あなた様のことです」
『………あれ?』
ベリアンから発せられた言葉に思わず声を漏らした。
『私、いつから屋敷の主人に?』
「えっと…こちらにきた時からです。その指輪に選ばれた者がこの屋敷の主であり、私たちの主となります」
『そうだったのね…』
「あの、主様はご存知なかったのですね」
恐る恐る手を挙げたフルーレが質問する。
『ええ。ここに来たのも昨日が初めてで、私の不注意でお話の途中で元の場所に帰ってしまったから…』
「じゃあ、俺たちが“主様“と呼んで返事をしていたのは…」
それに乗ってロノも挙手して質問。
『客人にはそう呼ぶようにしているものかと…』
メイド喫茶や執事喫茶のようなものをイメージしていた。
質問に対し思ったことをそのまま答えていると、静かに聞いていたルカスの肩が小刻みに震えいるのが見えた。
顔を逸らし口元を手で隠してはいるが、笑っているのはバレバレである。
何かおかしなことを言っているだろうか?
そう思っている月華に気づいたのか、彼は「失礼しました」と言ってこちらを向いた。
「さて、主様。疑問も解決されたところで…いかがでしょう?この猫ちゃんを屋敷の執事にするというのは…」
ルカスの言葉に本来の議題(?)について思い出す。
『追い出すのは可哀想だから、皆さんがいいならここにおいてくれたら嬉しいわ!それに、黒猫執事って面白そうで可愛いから』
「後者が本音ですね、主様…」
「主様のご決断なら、私たちは何も申しませんよ」
『ありがとう。黒猫ちゃん、ここに住むからにはちゃんと働くことをお約束できますか?』
「もちろんです!一生懸命働きますね!」
「猫さん。今、この時をもって…この御方は、あなたの主様です。ちゃんと執事らしい礼儀作法を覚えてもらいますからね」
「了解しました!よろしくお願いしますね、主様!」
『ええ…よろしくね』
ベリアンがしっかりまとめをして、黒猫も屋敷の執事として任命された。
“猫さん“では、他人行儀に感じるということで首輪に書いてある“MUU“から“ムー“と呼ぶことにしたが、早速ロノとフルーレによって揶揄われたのは言うまでもない。
そんな2人だが、ムーの燕尾服について喧嘩が始まってしまった。
猫の服だとしても一切妥協をしないと言うフルーレはしっかりした衣装担当だ。今回はロノに過失があるかな。
ルカスが間に入って仲裁をしている時、扉の外から足音が聞こえた。
勢いよく開いた扉から出てきたのは、昨日会ったハウレスだった。彼の額には汗が流れていて、彼の肩には長髪の青年が背負われていた。
あちこちに血の痕があり、何より腕の負傷がひどい。
「ルカスさん!ルカスさんはいませんか?」
「ハ、ハウレスさん?」
「き、緊急事態です!」
「私はここだよ。どうかしたのかい?」
「治療をお願いします!ボスキが…負傷してしまって…」
「ぐっ…ったく…天使のやつら…」
ボスキと呼ばれている彼は、ぐったりしながら悪態をつく。
「一体何があったんですか?」
「魔導服なしで天使と戦ったんだ」
「そんな無茶な」
「チッ…あいつら…魔導服無しじゃ、ここまで手こずるのか…」
魔導服って…確か昨日ロノが話していた天使と戦うための服…
昨日のロノの戦いを思い出すと、彼はあっさりと天使を倒していた。
(魔導服の有無で天使との戦いにかなり優位が違うの?)
だとしたら、なぜ魔導服無しで戦いに出たのだろうか…
疑問が飛び交う中、ルカスが医務室に運ぶように言って、ロノとハウレスによってボスキは運ばれていった。