悪魔執事と黒い猫 夢小説
□第6夜
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「おはようございます!主様!すぐ朝食の用意するから、椅子に座っててくれ!」
翌朝。自室まで迎えに来たベリアンが食堂までエスコートする。食堂の扉を開ければ、すぐに気づいたロノが元気な挨拶で迎えた。
「こらこらロノくん。主様への敬意を忘れてませんか?」
「あっ!そ、そうだったな。えーっと…なんて言えばいいんだっけ?椅子に座って待ってて…ください?」
ぎこちない敬語に思わずクスリっと笑ってしまった。そんな月華を見てロノは恥ずかしそうに頭をかきながら「敬語って難しいな…」と呟く。
「とにかく!ちょっとだけ待っててください!パパっと朝食の準備をしますから!」
『ありがとう。いい匂いするからどんな朝食か楽しみにしていたの!』
「へへっ…」
ベリアンによって引かれた椅子に腰掛けながらそう言うと、ロノは恥ずかしそうに笑った。慣れた手つきで朝食をどんどん並べ始められる様子を眺める。
「それでは主様!朝食の準備が出来ました」
ベイクドビーンズ、ハッシュドポテト、ポーチドエッグ…さらに焼きたてのスコーンが綺麗に盛り付けされた。
『わぁ…すごい…』
「いい匂いですね〜!この料理、全部ロノさんの手作りですか?」
「当たり前だろ?この屋敷の食事は全てオレが作ってるんだぜ!」
誇らしげに胸を張るロノ。やんちゃな見た目なのに料理上手であることに意外だと言ったムーにムッとする。
月華も初日に思ってしまったことは秘密だ。
朝食を作らないぞという言葉にムーが慌てて謝ると、「冗談冗談!」とニカっと笑った。
平和な朝だ。では、冷めないうちに…と、手を合わせた。
『いただきます。』
そばにあるシルバーを手にとって出来立ての朝食に手をつけた。
数分後。ロノの料理はどれも美味しかった。特にサクサクのスコーンはいくらでも食べたくなるものだ
「それでは主様。デザートもお召し上がりください」
『まあ…デザートまで…そこまで気を使わなくてもいいのよ?』
「いいえ…主様には最高のおもてなしをさせていただきます」
そう言って、ベリアンはデザートのお皿を目の前に置いた。
「本日のデザートはロノくんの手作り糖蜜パイでございます」
「オレの自信作なんで食べてみてください!」
『シナモンのいい匂い…みんなはもう朝食を済ませたの?』
「いえ。私たちは主様のお食事の後に食べることになっております」
『あ…そっか…』
執事が主人より先に食事を済ませることはないのだった。
しかし、こんな広い食堂で1人だけ食事をするのも…
『もし良かったら、デザートだけでも一緒に食べない?』
「それは、ありがたい提案ではございますが…。うーん…」
『1人で食べるのは寂しいわ。毎回の食事とまでは言わないから…』
ね?、と考えるベリアンに許可を求めると、彼はクスリッと笑った。
「分かりました。こんなに主様に誘って頂いたのに断るのは逆に失礼ですね」
ベリアンの許可が下りた途端、ムーとロノが便乗。お皿の用意を始めようと厨房へ向かう後ろ姿が微笑ましい。
「あっ!そうだ…!せっかくなんでバスティンくんも呼びましょうか?」
『バスティンさん?初めてお会いする執事さんね』
「はい。少々お待ちください」
そう言ってベリアンはそばにあったベルを鳴らした。